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イングランドvsフランス
フランスラグビーは後退か?イングランドのコピーは面白くない

「歌を忘れたカナリア」と言うが、この言葉がそのまま当てはまるのが、最近のフランスラグビースタイルだろう。

2月13日、宿敵イングランド―フランス戦がトゥイキナムで行われた。北半球の好ライバル同士の一戦で、双方パワー比べで見るべきものが少なかった。

試合の決着は、2トライを決めたイングランドが競り負け。正確なヤシュベルの左足が8本のうち6本のPGを決めたフランスが逆転勝ち。フランスはトゥイケナムで8年ぶりの勝利をもたらした。

あれでは勝ってもマトモに喜べない。あのフランスの華麗な「フレアー」(閃き)は一体どこに消えたのだろうか?

フランス代表ラポルト監督は、03年ワールドカップ優勝のイングランドスタイルの影響、コピースタイルの崇拝者だ。ラポルトは、イングランドの素晴らしいパワー、DFスタイルを口にする。

国内でも批判の声が上がってきた。フランス国内でも、「フランスラグビーは40年前に後退した」から始まり「コピーするな!」と、喧々ガクガクだ。

WC準決勝でフランスがイングランドに7―24で敗れ去った時、後任監督は元代表ウイングのP・ラジスケにほぼ決定していた。自らも勇退を公言したが、いつのまにかラポルトは地元開催の07年WC優勝を約束、監督として居残った。

昨秋、フランスはオーストラリアに27−14で勝ったが、対NZ戦でのパワー争いに話すべきところなく6―46で敗戦している。パワー、強靭な身体、精神力は黒衣集団の「キウイ」に勝てるとは思わない。南半球に対抗する唯一の手段は、フランス独特のプレースタイルの研磨だったはず。それがフランスラグビーの真髄だと思うのだが・・・。

今季の6カ国対抗戦で、少なくともラポルトはある程度の結果を明確に出さなければならない。フロントロー3人を緒戦より入れ替えた。2列目は不動の主将とティオン、3列には復帰したベッツエン、ボンネアー、シャバル、ハーフはヤシェヴィルとドゥレイグ、11番にマール、トゥレイユ、リーベンベルグ、ドミニチ、Fは変わらずエルオルガだった。

後退にはユース代表選手3人を交代させてプレー経験を積ませていた。コンゴ生まれの異色、フランカーのニヤンガが光った。

一方、イングランド選手はWC優勝経験手で占めている。FWとBKがアンバランスだ。

スクラムハーフのエリスはデビュー戦。バックスは11番のリュ―ジー、主将FBのロビンソンだけがWC経験者だ。

暇つぶしに両チームスタメンの体重を計算してみた。イングランドのFW8人が903kg、BK7人が612kg、総計1515kg。一人平均101kgだ。

フランスFW8人で848kg、BK7人が623kg、総計1471kg。一人平均98kgだ。イングランドFW前3人が339kgフランスの前3人が330gとなっている。体重の数字が総てではないが、少なくともひとつのパワーの目安になることは確かだ。

試合は大男たちが真っ向からの肉弾戦、力比べの連続。イングランドの2列目パワー突進が効果的だ。再三、背後に出てから回して繋ごうとする意欲を見せて、フランスのお株を奪う形を作りBKと一体の攻撃を見せた。

SOドゥレイグ、トゥレイユらの高い甘いタックルからイングランドのトライチャンスが生まれた。27分、トゥレイユが一発で倒せず、バークレイが30m独走してトライ。36分にはロックのグリューコックがド真中を縦割り突進。走り込んできたリュ―ジーにパス。ポスト横に人差し指を上げてダイビングトライ。

イングランドが前半を17―6で終了。このまま押し切るような勢いだったが、後半、イングランドは得点チャンスに、ホジソンがPGで追加チャンスを悉く失敗。こうなると、いつのまにか流れはフランスに傾いた。フランスFWが攻勢に出る。イングランドFWにミスが続きBKにボールが回らない。フランスが逆にペナルティごとにヤシェヴィルの左足が冴えて確実に得点を重ね、74分、17―18点とついに逆転勝利を収めた。

ちなみに、一躍ヒーローになったヤシャヴィルは2代目選手。父親、ミッシェルは68年代表選手でフロントロー、ロックで活躍、グランスラムを達成したメンバー。

2週間後、フランス対ウェールズ戦はどんなプレーを見せることができるか。

ベッツエンの抜群の効果的なタックルを見て、フッと思い出した。昔、田舎ではムササビが飛んできて人の顔に張り付き人を窒息させると、恐ろしい話を聞いたことがある。真実はともかくとして、かれのは「ムササビ」タックルと呼びたい。捕まえた瞬間相手の身体にピタリと吸い付くように張り付き、足を絡げて一瞬にして相手の手足の動きを殺す。当然ボールはパスできない。

玄人受けする鋭いタックルだ。あれは一見の価値がある。ぼくはこの試合「最終選手」にかれを推薦したい。

(望月次朗)

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