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第29回パリ・マラソン
男女共、予想外の無名選手がスプリント争いで優勝決定

パリは苦労せず参加者数を毎年確実に増加している。今年は史上最高の35500人に膨れ上がった。近年、主催者は大会宣伝、エリート選手招待、報道関係者用に資料作成など、殆ど眼中にない。黙っていても、地の利を生かした参加者増加で利益追求に励んでいる会社。トップ選手に高額な出場料金を支払う興味はない。安上がりな2、3流か無名選手で済ませるため、記録への期待は薄い。それでも参加者は年々増加、今年は2012年五輪招致に立候補しているために好影響を及ぼしているとか。レース当日は絶好のレースコンディションに恵まれたが、比較的平凡な記録に終わった。

サリム・キプサンガ、マラソン初優勝達成

ハーフを63分30秒設定だったが、最初の5kmを15分12秒、10kmを30分11秒のペースで入った。トップグループは15人と、多くはケニア、エチオピア選手が占める。ハーフを64分9秒で通過。この時点で記録的な興味は遠のき、ケニア6選手の誰が優勝するかに焦点が向けられた。ヴァンセンヌの森を折り返し、セーヌ河沿いに出ると向かい風になる。ロジャー・ロップ、ダニエル・チェリボ、ポール・ビオット、ダヴィド・キルイ、サィム・キプサング、ピーテー・チェベットらのケニア勢が、お互いに牽制して誰も前に出ない。30kmを過ぎてから次第にペースアップ。37km地点で、03年優勝者のロップが後退。キプサング、ビオット、チェベット、チェリボら4選手の争いになった。しかし、この4選手が横一線の併走も長く続かず、40kmを過ぎると、優勝争いにはキプサングとビオットの2人が残った。

元ジュニア世界選手権10000m2位のキプサングが、スピードにものを言わせて40kmを過ぎてからギャップを広げて逃げ切り、マラソン3度目、自己記録(04年ロッテルダム、2時間14分55秒、17位、アムステルダム7位、2時間12分44秒)を大幅に短縮して、マラソン初優勝した。優勝の喜びを「自己新記録で、まさか勝てるとは!勝ったことが信じられない。人生最高の日だ!マラソンに転向してよかった。」と、手放しで大喜びだ。2位になったビオットは「昨年は3位、今年2位。自己記録更新できたのは幸いだ。レース中は最後の数kmまでわれわれチームの作戦だった。レースは強いものが勝つ。」とあっさりしたものだった。

トラックのスピードを生かしたグリゴイェワ優勝

女子レースはアフリカ、ケニア、エチオピア選手と欧州、特に、4人のベテランロシア選手との対決だった。スタートから積極的なレース展開でリードしたのは、イタリア人のロサリオ・コンソロ、続く、アシャ・ジジ(エチオピア)、レイラ・アマン(エチオピア)、フローレンス・バルソシオ(ケニア)、ロシア勢は第2集団だった。5000mを17分11秒、10km、34分41秒、15km 52分23秒、20km、70分05秒と刻んだ

シドニー、アテネ五輪10000mでそれぞれ9、8位のリヂヤ・グリゴリイェワ(31歳)が、次第にペースアップ、出産からレース復帰初のレースのバルソシオに追いつき、追い越した。男子レースと同じく、勝負は40km通過後、グリゴリイェワがギャップを広げて2時間27分03秒の自己新記録、自己記録を5分ほど短縮して、2位に16秒差をつけて優勝。

(月刊陸上競技誌05年6月号掲載)

(望月次朗)

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