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ベケレのできちゃった婚

五輪10000m、世界選手権10000m2連勝、5000,10000m世界記録保持者、世界クロカン2冠5連勝の数々のタイトル保持者ケネニサ・ベケレ(エチオピア、26歳)が、11月17日、首都のアディス・アベバの最高級ホテルで各界の2000人を集めて豪華な結婚式、披露宴を挙げた。

朝10時からベケレの自宅に行く。ベケレ宅の周囲は警護の警官が固めていた。ケネニサが正装で弟のタリク、シドニー五輪5000m優勝者のミリオン・ウォルディらを従えて階上から降りてくると、笛と太鼓、手拍子で一斉に踊りだす。ハイレは、エチオピア独特の方、状態を小刻みに震わせながらケネニサと踊りだす。次はアベベ・メコネン、モスクワ五輪5000,10000m2冠のイフターも加わる。ベケレを先頭に、数百人がリムジンまで後続する。ケネニサが新婦の家に迎えに行くのだ。












05年1月、ベケレと一緒に練習中、数ヵ月後に結婚式を挙げる予定だった婚約者のアレムが不慮の事故で亡くなった。

ベケレが車から降りると、花嫁の親族をはじめ数百人が手拍子で迎えて家に招じ入れる。ケネニサは大きなバラの花束を抱え、ただ一度の映画に出演したことのあるダナイト・G・エグジアブハ(22歳)が待機する部屋に入り、花束を与え、ゆっくりベールを挙げてキス。

これらの細部にいたるまでの式典は、結婚コーディネーターが仕切っている。エチオピアの結婚式で重要なことは、ビデオ撮影とカメラマンの記念撮影の記録だ。かれらの豊富なポーズ、注文が多くて進行が遅れるのだ。小さな庭に繋がれていた2頭の牛は、多分、結婚式後の披露宴でこの国の習慣で生肉を食べる「肉」になるのだろう。












数台のバイクが先導しながら、新郎新婦を乗せたリムジンが市内を練り歩き「お披露目」パレードに出た。数十台の高級車の長い列は、2時間以上も予定を大幅に遅れて、通常は公開していない「アフリカ公園」内の特設した屋外レセプションに到着。ベケレが国民的な英雄だからできること。公園に入ってからも方々で撮影。新郎新婦が一段と高いところに着席したのは3時を過ぎていた。昼食が一段落すると、バンドが凄いボリュームで演奏を始めた。誘われるまま新郎新婦も芝生の上で身体を小刻みに振りながら踊りだす。夜になると国内最高級ホテルに、ベケレは各界の2000人を結婚式、披露宴に招待した。要するに、ベケレは結婚式、披露宴を数回に分けて行ったのだ。新郎新婦は一段と高いヒナ壇上に鎮座。エチオピア人は指を器用に使って食べるが、ここではスプーンで食べ物をお互いの口に入れる。これは「愛」の表現であるが、男同士でも「友情」の証に行う。

ホテルのオーナー「シェイク」は、人に聞くとサウジアラビアで財をなし、世界で77番目のとてつもない金持ちらしい。いろんなスポーツ、芸術をサポートしている人物とか。やがて、新郎新婦がこの世界有数の資産家にお礼の意味を含めた贈り物を与えた。その場で開封、掲げて披露した額縁は、なんとベケレが乳児を抱いている写真だ。階上は一瞬どよめいたが、女の子は2ヶ月前に誕生したとか。結婚式でベケレはわが子誕生を公にした。エチオピアの慣習としては、子供の命名は生後3ヶ月以後。6日間に3回の披露宴が催され、両家がめでたくひとつになったのだ。

 

(望月次朗)

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