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衝撃のランナー、セメニャ

女子800mキャスター・セメニャ(南ア、18歳)は、7月アフリカジュニア選手権大会で1分56秒72の今季世界最高記録を出して世界をアッと言わせた。あのゾーラ・バッドの記録を7秒以上回るものだった。 初登場の世界選手権だが、全く恐れもない怪童振りを発揮して予選1組で2分02秒51でトップ通過。次の日、準決勝2組に出場して最速記録1分58秒66のダントツで楽々通過して決勝に駒を進めた。

ハスキーな声で、「初めての国際大会。ベストを尽くします。作戦は先頭に立ち、それからペースを落とす。ほかの選手を先にやってからゴール前でペースアップして勝つ。サッカーが大好き、ポジションは左サイドバック。走ることは単なる「遊び」だと思っている。来年、止めたかったら走ることを止めるかもしれない」と語った。

決勝のセメンヤは、スタートから競争相手に眼中なくトップに立ってマイペース。400mを56秒83で通過。パワフルなストライドでディフェンディングチャンピオンのジャネット・ジェプコスゲイ・ブシエネイ(ケニア、26歳)らをグングン引き離して2秒75の大差で圧勝。世界をアッ!と言わせた。

決勝レース前、セメニャの性別の疑惑問題が浮上。大騒ぎになったため、南ア協会が決勝後の記者会見すべてをキャンセル。コメントは残っていない。

ことの経緯はこうだ。世界選手権前、セメニャから通常の3倍以上のテストステロン(男性ホルモン)が検出された結果がリークされた。これが性別問題に発展した根拠だ。そこでIAAFが南ア協会に疑惑の性別問題をクリアーすることを提唱で動いた。まず、南ア協会会長レオナルド・チュエナがIAAF理事を辞任。南ア会長の立場でセメニャは「女性」であることをIAAFに確約した。

IAAFは、1996年以降一貫して性別チェックは人権問題にまで発展する複雑な問題が起きる可能性があるため行われていない。人種差別など諸々の問題に飛び火しかねない。世界選手権が終了しても、根本的な解決にならないがこの問題はともかくも南ア陸連に一任された。

南ア選手の帰国に数百人のサポーターが空港に集結、ヒロインを出迎えた。セメニャの衝撃な国際大会デビューは、昨年、パメラ・ジェリモ(ケニア、18歳)が無名の800mランナーから、わずか数ヶ月でアフリカ選手権、北京五輪優勝、ゴールデンリーグ6連勝して100万ドルを獲得したセンセーショナルの活躍に類似している。

 
(09年月刊陸上競技10月号掲載)
(望月次朗)

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