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新設ダイヤモンドリーグ、永遠の輝きを!

今季、国際陸連が世界的な陸上競技普及、拡大を目指して新設した最高峰シリーズの「ダイヤモンドリーグ」(以下DLと省略)最終戦が8月27日、ベルギーの首都ブリュッセルで華やかに終焉した。DLは男女32種目を実施、各大会は半分の15種目を選択、残りの半分を来季に実施する意向だ。このため実質的にチューリッヒとブリュッセル2大会で、各種目別最高得点者が表彰された。ちなみに、来季の最終戦はチューリッヒになる。現存のDLシリーズの環境、全体のシステム、契約などは2年間据え置きとされている。DLシリーズがドーハでデビューして以来、各地でのハイライトを本誌で紹介してきた。今回は終盤のロンドン、チューリッヒ、最終戦のブリュッセル大会のハイライトを通して、今季の総括を試みた。

ロンドンDL,タイソン・ゲイ今季世界最高記録で復活

ロンドンDLは、異例のDL32種目のうち27種目を2日間で実施する大会だ。欧州、アフリカ選手は、それぞれの大陸選手権を終えた直後のため、精神・肉体的な疲労、モチベーションの低下などから完全に抜けきっていないため、一般的に記録は低調だった。大会直前、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)が8月6日ストックホルムDNガラン100mでタイソン・ゲイ(アメリカ)に完敗。「今年は選手権のないリラックスできる年。アキレス腱が完治していないので無理をしない。来季は頑張る」と、今季出場予定のすべてのレースをキャンセルするという爆弾宣言。加えて、今季前半のDLで好調だったアサファ・パウエル(ジャマイカ)も故障で欠場。主催者はダブルパンチを受けた。大会初日、レース直前の豪雨で試合を45分中断するなど、悪コンディションや不運が続いたが、ゲイが今季世界最高記録9秒78で圧勝。大会を救済した。「体調はまだ完璧ではないが、調子は良いことは分かっていた。悪条件でこんな記録が出るとは予想外だった。コーチがどんな状況でも9秒7台で走れると太鼓判を押してくれたが、今日のレースでそれが証明できた」と自信満々だった。男子400mは、今季無敗で好調のジェレミー・ウォリナー(アメリカ)と急成長のジェルマン・ゴンザレス(ジャマイカ)の優勝争いが見ものだった。レース巧者のウォリナーが44秒67で優勝。ゴンザレスが44秒80で2位だった。男子砲丸投げは無敗を続けてきたクリスチャン・カントウェル(アメリカ)が、「一体なにが起きたか見当もつかない。負けたことは事実だ」と苦笑。ホッファの優勝記録は21.22m。

アリソン・フェリックス(アメリカ)が200mを22秒37で優勝。前日の400mは50秒79で優勝し、二種目制覇を達成。DL種目別総合2冠優勝に一歩前進した。女子5000mは、ティルネシュ・ディババ(エチオピア)が記録は平凡な14分36秒41というものだったが、久しぶりにシャープなスプリントで圧勝した。

来年のロンドン大会は、伝統あるクリスタルパレス競技場を出て、ロンドン五輪リハーサルを兼ねて新設の五輪競技場で開催される予定だ。

チューリッヒDL,種目別総合優勝者決定

大会ハイライト、DL種目別総合優勝者の優秀選手を紹介しよう。

男子400mのジェレミー・ウォリナー(アメリカ)は、最終戦で44秒13の今季世界最高記録を樹立、7戦全勝優勝した。

男子5000mは、DL前半好調で確実に得点したイマネ・メルガ(エチオピア)が16ポイントで総合優勝。ちなみに、このレースで5位のモー・ファラ(イギリス)は12分57分94秒でイギリス新記録を28年ぶりに更新した。110mhでデヴィッド・オリヴァ―(アメリカ)は向い風ながら12秒93を記録、6戦全勝。男子走り高跳びは、4戦全勝のイヴァン・ウコフ(ロシア)だが記録は今一つ伸び悩んだ。男子円盤投げは今季最も激戦の種目だ。大会ごとに優勝者がコロコロ変わったが、コンスタントな力を発揮したピオトル・マラチョウスキ(ポーランド)が総合優勝を獲得した。一方、女子100mで今季世界最高記録の10秒89で制したベロニカ・キャンベル―ブラウン(ジャマイカ)だが、種目別総合優勝はカーメリタ・ジェッタ(アメリカ)に譲った。女子400mはアリソン・フェリックス(アメリカ)が優勝。ブリュッセルで200m優勝、2冠総合優勝獲得に王手を掛けた。女子砲丸投げは7戦全勝のナデズダ・オスタプチョク(ベラルシー)らが初代DL種目別優勝者になった。

ブリュッセルDL最終戦

この大会では伝統的にスター選手をクラシックカーに乗せて場内を一周する。そして、最後にDL種目別総合優勝者全員が壇上で紹介され、最後に登場したIAAFディアック会長が現れると花火を打ち上げて「ダイヤモンドリーグ」の成功を祝った。

この夜のハイライトは、タイソン・ゲイが9秒79、2位のネスタ・カーター(ジャマイカ)9秒85と続いた。男子800mで世界新記録を出したばかりのデヴィッド・ルディシャ(ケニア)が、カキらを抑えて圧勝。男子400mhはバーショーン・ジャクソン(アメリカ)、棒高跳びはレノード・ラヴィレニエ(フランス)、三段跳びはテディ・タムゴ(フランス)、男子砲丸投げでリース・ホッファが22.16mを投げて優勝したが、種目別総合はクリスチャン・カントウェル(アメリカ)が獲得した。男子やり投げで、アンドレアス・トルキルドセン(ノルウェー)が89.88mの好記録で優勝。女子200mで優勝したアリソン・フェリックスは、チューリッヒ400mに続きDL総合種目別2冠を達成。女子800mは、ジャネット・ジェプコスゲイ(ケニア)が1分58秒82で優勝。性別問題で世間の注目を浴びたカスター・セメニャ(南ア)が1分59秒65で3位になった。女子走り高跳びは、ブランカ・ブラシッチ(クロアチア)が、2mをクリアーして7戦全勝でシリーズを終えた。

陸上競技が時代とともに大きく変化を求められてきた。初回のフライングで失格。他のスポーツのようにランキング制度を取り入れ、3ヶ月間の長期にわたって各種目で世界最強選手が競う新システムは、大幅な商業化の可能性を見出したものと言えよう。新設のDLは世界陸連が直接投資、メディア露出、報道ネットワークなど、中央で一括統制、指導を1本化したシステムだ。このシステムがどのような発展の可能性、影響を及ぼすのか、即急に結論、効果が出るものではないだろうが、今まで以上に本格的に世界陸連指導のプロ化と言えよう。世界最高シリーズの名前にふさわしい、DLで勝ち続けるのは簡単なものではない。選手権のような短期間勝負と違い、真の『チャンプ』を決めるシリーズに成長するだろう。来季は今季以上にDL出場に興味を見せる選手も多くなるだろうし、世界選手権選考会、世界選手権、DL出場など、体調管理が一段と難しくなることが予測できる。

 
(2010年月刊陸上競技10月号掲載)
(望月次朗)

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