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2004年9月26日 ベルリンマラソン
“これから売り出します!”渋井陽子日本新記録樹立
レース前日、宿泊先のロビーで買い物帰りの渋井選手とバッタリ会った。話が弾み「日本記録を目指します!」と、自信たっぷり予告宣言があった。その言葉どおりスタートから、2人のペーサーと共に、機械のように正確な16分30秒ペースをキープ。最後までリズムが崩れない。01年ベルリンで高橋尚子が樹立した2時間19分46秒の日本記録を5秒破る2時間19分41秒で圧勝した。史上5人目のサブ20分を刻んだ。レース後、「これから売り出します!」と、朗らかな渋井節も復活した。

―やりましたね
渋井選手―アー!ヤッと、やりました!(Vサイン)

―日本新記録は予告どおりでしたが、あと2秒でアジア記録を塗り替えられたが…?
渋井選手―今は走り終えたことが重要で、記録はどっちでもいいです。良いリズムで完走できたことがサイコーです。

―ゴール直前、ブランデンブルク近くでアクシデントがあり時間をロスしたのでは?
渋井選手―どうですかね?行く先を間違えた。レース中は本当に記録のことは全く考えていなくて、監督がちょこちょこ沿道から言ってくるのは良く聞こえていたのですが、無視して走りだけに集中しました。

―どこで日本記録を意識しましたか?
渋井選手―40kmで監督が”いけるぞ!”なんて叫んでいましたが、その時19分台でいけるかな?と、チラッと思いましたね。

―日本女子最速の記録保持者の感想は?
渋井選手―まだ、あんまり実感もないです。とにかく走りに集中、5kmを16分30秒ペースでどこまで行けるかを気にしていました。終わってみたら記録が出ちゃった感じですね。

―予告宣言した、好調の背景はなんですか?
渋井選手―なんでしょうね?確かに、昆民の合宿から故障もなく順調に仕上がってきましたし、ここらでしっかり走っておかなければならないような状況でしたんで。

―忘れられちゃう?
渋井選手―それよりも、中途半端は嫌です。自分でしっかりと結果を出さなければ…と思っていましたから。

―大阪国際に失敗。アテネ五輪を逃し、土佐選手の復活、野口選手の金メダル獲得など、周囲の状況の影響を受けていろんな刺激になりましたか?
渋井選手―そりゃあなりますね。大阪のときは、いろんなことがありまして(笑)レース前から精神的に不安定な時でしたので、レース前から余裕、自信がありませんでした。アレじゃあねー。マラソンの対しても甘い考えをもっていたかもしれません。土佐先輩が名古屋国際で凄い走りを見せ五輪代表に選ばれ、復活した根性など、凄く刺激されましたね。五輪は昆民で合宿中。あそこはTV放映がなくて見てないんです。

―特別な練習など、今までと違ったことをしてきましたか?
渋井選手―5月半ばから昆民で合宿。8月は監督が土佐先輩について五輪に行っていたので、一人で練習。30km走をダラダラと続く平坦コースで走るんですが、これが意外に手を抜けずキツイ練習でした。おかげで、これがいつもは30km過ぎて力が入らなくなるんですが、体力、気力もしっかり”粘る”ことができました。

―食事にも細かい配慮があったとか?
渋井選手―3か月前から、栄養学の本などを読んで、カーボローディングをやってみようかとか。身体にいいものをバランスよく、例えば納豆なんかも良く食べました。これまでは痩せることを考えて食べなかったりすることもあったんですが、今回は3食の食事をしっかり摂りました。しかし、なかなか体重は落ちません(笑)やっぱりしっかり考えて食べないと練習の効果もありません。

―小雨、後半に気温が下がりましたが、気にならなかったか?
渋井選手―小雨は気にならなかったのですが、路面が多少滑りやすかったことと、水たまりが多かったので避けて走った。下ばかり向いて周囲を見ることがなかったし、最後のほうは水たまりにバチャバチャ突っ込んで走りました。

―ペースメーカーはどうでしたか?
渋井選手―最高!本当に狂いのない一定した走り方でしたね。

―35km過ぎてペースがちょっと落ちたが…?
渋井選手―そうですね。ペースメーカーがいなくなってから、ちょっとペースが落ちましたね。そこら辺が今後の課題ですかね。

―日本記録で渋井復活ですね。
渋井選手―そうですね。ここら辺でがんばらないと…、とにかく今回は無事に完走優勝して、しっかりとタイム的にも目的を果たしました。これが私に最も大切な自信を与えてくれました。

―なぜ、片手を上げてテープを切るの?
渋井選手―なぜかといわれても…、万歳でテープを切りたくないんですよ。アレだけはやれませんね。

―今後の予定は
渋井選手―これはひとつのステップです。これからガンガン走って売り出します!

―来春の予定は?
渋井選手―もう大阪はイイって感じで、多分、名古屋に出場するかもしれません。

―高橋尚子も出場すると聞いていますが…
渋井選手―誰が出場しても、周りは気になりません。積極的に自分のレースをするだけです。

―来春は世界選手権を狙うんでしょう?そして、その先に北京五輪がありますね。
渋井選手―もちろん、来年の世界選手権には出たい気持ちがあります。今後のことは監督と相談して決めます。(月刊陸上競技11月号掲載)

(望月次朗)

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