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ラグビー六か国対抗戦開幕
フランス辛勝、イングランドはウェールズに敗戦

2月5日、恒例の05年6カ国対抗戦が、フランス―スコットランド戦で開幕した。この日、時間をずらしてウェールズ―イングランド戦も行われた。

試合数日前に発表があったフランスのスタメンを見て、少なからず失望した。昨秋、フランスは対NZ戦で屈辱の敗戦(6−45)をホームで強いられたのに、ラポルト監督の基本的な選手選考は「パワーラグビー」に象徴されているからだ。

故障復帰の第3列の不動3選手が、マニュとアリドロノキは故障、ベツソンは試合停止で代表洩れした。

替わった3列の選手、ボナイレー、タバコ、シャバルらは、レギュラー組みよりさらに大型選手だ。

ハ―フ団が新コンビ。3年ぶりに代表復活したミニョーニと11年ぶりに代表復活したSOドゥレギュの2人。しかし、固くなったのか、SOが得点チャンスの最初のPK3本を外し、フランスを苦戦に追いやった。

バックスはドミニチが左ウイングに返り咲き、10番にはジュニア時代に有望視されて6年ぶりに代表復帰したデラーギュを加え、トレイユ、リエベンベルグ、ルジェリらは、第3列目の選手並みで俊足大型選手を揃えた。
昨秋、日本代表はこのスコットランドを相手に8―100で大敗した。
1883年から開始された当時4カ国(イングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズ。フランスは1906年加入)対抗戦に匹敵する激しい“闘志”で、スコットランド選手が日本代表と対戦したとは到底思えない。
スコットランド選手が、一世紀の伝統あるフランス戦に挑む集中度は、別個のフォルダに保存したもの。その長い時間をかけて濾過された濃密な闘魂は、伝統の一戦に投入されるエネルギーだ。

8万の観衆を目の前にして、試合は肉弾正面衝突の繰り返しだった。意味のない強力フランスFWが「俺らは強いぞ!!」を見せるためだけに再三見せる“ドライヴィングモール”は効果ゼロ。前進するも得点に結びつかない。
いざ、スクラムトライのチャンスには、スコットランドの踏ん張りで最後の一押しが決まらないようでは洒落にもならない。
スコットランドの第3列、ホワイト、ホッグ、ペトリエらは、ほぼ互角にフランスと善戦した。FWは、至近距離の力争いだけなら甲乙つけがたい。
まさか、フランスは一回りも小柄なスコットランドバックスを見てこれは蹴散らせると思ったのではないだろう。が、強行突破できるだろうという自信と希望的観測だけで遮二無二当たる。フランスは頼みの大型バックスが空回り、背後のライン突き出るチャンスを悉く阻止された。

スコットランドはパークスのキックで左右ウイングの後方、タッチラインギリギリにボールを落す。これはフランスの出足を鈍らせる効果と距離をゲインするが、そこから効果的な攻撃、作戦、個人能力突破の武器は持たない。
フランスのバックスも同じようなもたつきぶりだ。決定的な“形”のトライチャンスを一度も作れない。狙った3本のコンヴァーションを外した。フランス得点ゼロ、相手が4本のチャンスに3本決めて前半を終える。

後半のなかば、ただ凡戦の連続だ。

残り10分、ミチャラクとヤチェヴィルを投入。ハーフ団が試合の流れをガラリと変えた。ミチャラクが前に飛び出す相手のバックスの動きを良く見て好判断。左サイドのDFラインの背後を突くパント。
一瞬、緩いパントにDFが判断ミス。そこに走り込んできたトレイユの胸にボールがバウンスして飛び込できた。そのまま倒れこんでこの試合唯一のゴールを上げた。ただラッキーだっただけの話だ。
運も実力のひとつだ。明らかに、フランスの力はスコットランドを上回っているが、タックル、ディシプリンのあるチームは100失点のぶざまな試合結果はありえないのだ。

気の抜けたビールを飲んだような、後味の悪い、味も素っ気もない試合は16―9で終了。勝ったと言うものの、課題の多いフランス代表の緒戦だった。

この日、ウェールズはイングランドを11―9で破り12年ぶりの勝利を上げた。イングランドがワールドカップを制覇してから14ヵ月後、世代交代が大きなネックになっている。
今季、絶好調のアイルランドはフランス、イングランドをホームに迎える。1948年以来のグランスラム達成の可能性が楽しみだ。

(望月次朗)

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