マルセイユ 中田浩二
暖かな歓迎を受けた中田、緊張のホームデビュー戦を勝利で飾る 中田のデビュー戦は新聞で見た。アウエーでサンティティエヌ戦。ピッチ内に10cmぐらいの積雪の悪条件下で、通常なら中止になっただろうがTV放映があったので強行された。 「雪上試合」とでも呼ぼうか?寒い、ボールのイレギュラー、コントロールはできない、蹴ったボールが飛ばない。最悪のデビュー戦フル出場を果たした。中田は新聞には採点を受けたが、とても採点されるような状況ではなかった。 3月12日、リーグ29週がホームで行われた。対戦相手はランク8位の強豪ランス戦。61分、トルシエに指示を受け、尻を叩かれピッチに送り出された中田は左サイドでプレーした。 この日、春が一挙にやってきた。汗ばむような地中海沿岸特有な紺碧の空からの日が眩しかった。パリとマルセーユでは10度は違うだろう。 ここではこの問題に深く触れるのことは省くが、中田浩二は通常の移籍過程を外れた、日本、フランス国内でも移籍金なしで契約したのは問題を提起した。 試合結果を先に言う。中田がボールに触った回数は数えるだけ。プレー裁定は到底無理な話だ。トルシエの中田への指示は、多分、ゴール近くでボールがきたら思い切り「蹴り返せ!」だろう。忠実な「大蹴り」が再三あった。 サイドからライン際の前パスが2回、サイドから10mぐらい上がって、ランスの主将ルクロワをフェイトントでずらしてクロスを入れたが失敗。強いて書けばこの程度だった。 朝日インターネットで中田の記事を読んだ。共同からのものは「・・・・得点に絡まなかった。」とあったが、未だ、日本の新聞記事は得点に絡む云々が、プレー採点条件とは情けない。また、それをそのまま掲載するほうも程度が低い同類だ。 中田は攻撃より明らかに、DFライン、ポジショニング、隣りのメイテの動きに、かなり緊張しながら注意を払っていた。 マルセーユをシーズン途中から監督を引き受けたトルシエが「巧く纏めている」と言う印象を受けた。変形の2−4−4。攻撃的な中盤でボールキープ、試合を組み立てる選手が不在だ。 ランスには優れた個人能力の高い選手が多い。FWにウタカ(ナイジェリア代表)、トマオト、MFにはレロイ(元パリ―SG)、ケイタ(マリ代表)、カリエール(元代表)ら、少なくとも攻撃陣は強力だ。案の定、中盤のボール支配力はランスが上だった。 FWの二人は実績、得点能力のあるマレーとリヨンの時より生彩にかけるリュインドラ。かれらを生かす攻撃的中盤が欠けている。やや高めのMFに17歳のナスリが左、右がサイドで真中を空けている。 MFの底にはフランス代表のペドレティ、やはり19歳のセネガル人ディアヤらの二人がかなり高い位置でプレー。右側には主将のデフー、ベヤらは堅固な守りをするが、ラインそのものが凸凹だ。センターバックの左側、大柄なメイテ、新人の左サイドバックのタイヲ(19歳、ナイジェリア)らの連携プレー、経験不足が弱点だ。最終DFラインの左サイドが弱点だ。 その弱点に中田投入をトルシエは考えているのだろう。トルシエはこの位置のヴェテラン、元不動の代表選手リザラズと合わずにかれを古巣のバイエルンに放出した。 チームの左サイドは、前から17,19歳、中田、また19歳の10代の若者で占めている。選手起用、作戦で選手に有無を言わせないトルシエの強い意志、指揮で短期間にリーグ2位をキープしている。 中田がレギュラーポジション獲得のチャンスは大きい。タイオか故障のカメルーン選手のオレンベらがライヴァルだろうが、中田は指示どおりに動くトルシエの好みの選手だ。 この夜、早くも日本から黒い背広を着た数人の男達がピッチの脇で視察していた。日本からのTV放映権交渉か?看板屋か?その手の人だろう。最近、小野、中村、中田英寿、高原、大久保らの勢いは以前よりも影が薄い。新しいマーケティングの可能性のチェックか? もし、日本のTV局がOM放映権獲得に興味を示せば、当然、その契約条項に中田試合出場が明確に記されることだろう。そうなれば余程のことがない限り、中田の出場の可能性はアフリカ選手より遥かに大きくなるのだ。 日本人選手がプレーする殆どの欧州クラブは、なんらかの経済的なバックアップを日本企業から受けている。これはクラブの日本選手受け入れの条件のひとつだ。結果的には「鴨ネギ」選手だ。 ほかの外国選手にはこの真似はできない。日本選手は遥かに恵まれた条件を持ちながら、レギュラーポジションですら獲得できないのが現状だ。 トルシエは中田に「もっと前に出ろ!」と指示しているらしいが・・・積極的な攻撃参 加で、彼のスピード、正確なクロスを叩き込むプレーを見せて欲しいものだ。 |
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