shot
 
NEWS
ケネニサ・ベケレ
”優勝はアレムに捧げる“、ベケレ、悲劇を越えてダブル4連勝達成

ベケレは5月8日、婚約者アレム・テシャレ(19歳、03年ユース世界選手権1500m優勝者)と結婚式を予定していたが、1月4日、一緒に練習中、突然、アレムが心臓麻痺で死亡した。

傷心は深く、ベケレは通常なら負ける相手ではないが、ボストン、バーミンガム室内レースで周回を間違えて2連敗。

レース前、ベケレのトロサコーチは「ベケレは精神的なダメージが大きい。調子は80%以下の状態。」と、クロカン世界選手権4連勝の可能性は半ば諦めていたようすだった。

ベケレは初日ショートレースに出場。練習不足、精神的に不安定で万全の状態ではない。さらに強豪選手が束になって「打倒ベケレ」を誓っていた。

スタートからカタール勢が先頭に立ち、速いスピードでベケレ潰しを狙ってきた。2周目にはシャヒーンが一時50mほどリードしたが、残り500mを残して全員が自滅、ベケレは圧勝した。

ベケレは「この勝利は、過去の優勝を総て足したよりも嬉しい!コースはタフできつかった。準備練習も昨年のように充分ではなかった。カタール選手が望み通り、早いレース展開を取った。もちろん、レース中にアレムのことを思い出した。アレムはぼくの心深く存在している。いつも一緒だ。この優勝はアレムに捧げる。」ベケレは団体戦も優勝。

シャヒーンは「勝てるチャンスがあると思ったが、改めて底知れないベケレの強さに驚いた」と正直に告白した。

大会2日目、ケニア勢は「お家芸」必勝を掛けて保存したエースのエリュード・キプチョゲを投入。おおよそ世界長距離トップ選手の総てが勢ぞろいした。

ベケレは中盤で一時後退したが、残り3周になると勝負は明らかにベケレ対キプチョゲ、国の誇りを掛けた2選手の激走、直接対決になった。しかし、キプチョゲも最終回で力尽きた。

ベケレはゴール前の直線で、観衆に向かって手を揚げ、投げキスする余裕で2位のタデセ(エリトリア)に14秒の大差をつけた完勝。

ベケレは「ライバルは昨日走っていない。レースは昨日より遥かにきつかった。泥で足を取られ、ペースが早かった。でも、アレム、エチオピアのため、自分の誇りに掛けて負けるわけには行かなかった。」と結んだ。

表彰式で、必至に感情を殺していた。

2種目4連勝達成。偉大なクロカンランナー、ポール・タガートに並ぶ、個人、団体金メダル13個を獲得。まだ、若干22歳だ。来年、ベケレは5年連続ダブル優勝を目標に福岡大会に来日する。

(月間陸上競技社05年5月号掲載)

(望月次朗)

Copyright (C) 2005 Agence SHOT All Rights Reserved. CONTACT