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第25回ロッテルダムマラソン
伏兵ムインディ優勝、冷雨、強風に阻まれた世界記録への挑戦

昨年の覇者フェリックス・リモ(ケニア)は、ベルリンでリモのペースメーカーを務めたジャクソン・コエチ(ケニア)らと共に「気象条件がよければ、世界記録に挑戦する!」と、自信満々に宣言した。フェリックスは、ロンドン、シカゴで連勝したエヴァンス・ルト(ケニア)と並ぶ、現在世界最強マラソンランナーの実力者。ところが、予報通りの悪天候のため、レースに波乱が起きた。マラソン28回目のベテラン、ジミ―・ムインディ(ケニア、32歳)が2時間7分50秒の自己新記録で意外な優勝を果した。女子はローナ・キプラガットが風邪気味、悪天候に苦戦したが楽勝した。参加者は12500人。

リモ、寒さに負けて故障

朝の気温は8度。スタ―ト10分前から風を伴った冷たい小雨が降り始めた。それでも最初の5kmを14分59秒で通過。このトップ集団に、優勝候補筆頭のリモ、ジャクソン・コエチ、ムンジ、マルティネス(スペイン)らと一緒に、小島孝之(旭化成)も含まれていた。10km通過タイムがまずまずの29秒43。トップ集団は15人。ヘルメンスがオートバイからペースの檄を飛ばす。止むかと思われた小雨が15km地点を過ぎるころから、本格的に振り出し最悪のコンディションになった。コ−スが郊外に出ると北西の向かい風。体感気温は相当に低くなったはず。ハーフ通過が63分20秒。この地点で予定ペースより20秒遅れ。トップ集団12人、小島も一緒だ。天候は悪化するばかり。記録への期待はほぼ絶たれた。25kmを過ぎると小島、ムンジ、ソンゴカらも次第に遅れだした。30kmを過ぎると、レースはリモ、コエチ、ムインディの3選手の優勝争いに焦点が絞られたがペースが落ちる。36km通過直後、ホノルルマラソン4度優勝、マラソン28回目の経験豊かなジミ―・ムインディ(ケニア、32歳)が、絶好の機会とばかりに先頭に立ち、たちまちギャップを広めて独走態勢。コエチが追ったが、そのままゴール。全く予想外の伏兵が優勝を浚った。ムインディはこう語る。「自己新記録で優勝できたのは最高な気分。リモの強さを十分に警戒したが、あそこは仕掛ける絶好のチャンスだった。」2位になったコエチは「ムインディが出た時、直ぐに追わなかったのが失敗。リモを心配していたので、追い始めたときは遅かった!」3位に甘んじたリモは「3位になったのは悪天候のため。32〜3km地点でハムストリングのトラブルが起きた。ムインディ、コエチラに気づかれないように後方に下がった。あの状況で良く走れたほうだ。世界記録への挑戦は、今秋に持ち越しさ。」小島忠行(旭化成)は、積極的にトップグループについて行ったが、悪天候にたたり予想外の2時間14分06分、15位に終わった。

「あの天気じゃあ〜ね。とにかくトップグループについてゆくつもりだったが、冷たい雨が振り出し、25kmを過ぎてから寒さで身体が固くなって次第に動かなくなった。」と、無念そうだった。

地元のヒロイン、優勝しても喜べず

一方、女子は地元期待のローナ・キプラガット(オランダ、元ケニア国籍)が2位に4分近くの大差をつけて楽勝。オランダ人と結婚。ケニアの長距離練習のメッカ、イテンに合宿場を持つ。「勝っても、この記録では・・・、27分台は練習なしでも出せる記録。冷たい雨と向かい風で走れなかった。」と表情は冴えない。キプラガットはレース数日前、風を引いて頭痛でコンディションは良くなかったが、レース当日はかなり回復してきた。レースを振り返って「2時間22分22秒の自己記録更新、あわよくば大会記録更新も狙っていたが、悪天候も重なり今回は完走して勝ったことが大事なこと。特に、ウォーミングアップから十分に身体が温まる暇もなく、スタートしたし、最初の5kmで身体が重く感じた。冷たい雨で後半はさらに向かい風できつかった!なんとか勝てたから・・・。これが最初のオランダタイトルを獲得、ヘルシンキ世界選手権出場権を得たのが大切です」と語る。

(月刊陸上競技社05年6月号掲載)

(望月次朗)

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