shot
 
NEWS
澤野大地
世界の強豪を相手に2位!

7月8日、澤野は初の欧州GP遠征の最終戦、最強選手が集結したローマGLで5.71mを一発で跳び2位の快挙を挙げた。が、国内報道は、同じ夜、福士加代子が樹立した5000mでの日本記録14分53秒22(12位)がトップ扱いだった。優勝したティルネシュ・ディババ(エティオピア)と福士の差は20秒ある。また、この夜3000m障害に出場した岩水が自己2番目の記録、8分22秒54で14位。かれの結果は福士とほぼ同じようなものと見てよいだろう。

福士と岩水の記録と世界トップレベルとを比較すると、相当な隔たりがある。福士は例によって、「面白かった!わたしだってケッコーやるじゃん!」とか、わけのわからないことでゲラゲラ笑っていた。大ちゃんもゴールに飛び込んだ直後、苦しい息の中で「澤野はどうですか?」と、気を使っていた。

澤野が戦ったメンバーは、1か月後迫った世界選手権大会決勝戦に顔を揃えるだろうと予想される、ほぼ現世界最強のメンバーだった。澤野が「2位になりましたよ!」と、喜んで寄ってきたのも至極自然だった。澤野に大きな可能性を期待できると思うのはぼくだけではあるまい。当然、澤野のライバル達は、ピーキングを世界選手権に向けて調整してくるだろうし、集中力、闘争心、モチベーションは比較にならないほどテンションを揚げてくる。

この夜、澤野がただ一人5.71mを一発で越えると、それに刺激されスティーヴンソンがすかさず2回目にクリアー、続く5.81mを一発で越えて澤野を突き放した。熾烈だが微妙な争いが大きな大会になればなるほど“潰しあい”となり、精神的な強靭さが結果を大きく左右する。澤野は2回目の跳躍でわずかに胸が触れ、バーを落としたのは惜しまれる。為末と同行していることも良い影響を与えているだろうが、初の欧州GP転戦に怯まず、世界のトップヴォルターに認められ実力も伴い、あのひときわ細い身体に秘める闘争心、自分のペースを守り孤独な戦いを克服している。

澤野は日本選手権記録無しに終った直後、周囲の人から罵声を浴び、自信喪失、傷心を抱えて為末大と共に緒戦のプラハから転戦を始めた。プラハで5.63mの平凡な記録を跳んで3位になったが「バーを再び越えたことが大変に嬉しかった!」と、失意のどん底から再起を賭け、世界選手権代表権獲得の跳躍でもあった。その1週間後、為末と一緒に移動したパドヴァで、ローマGLの調整大会で5.65mを跳んで2位。「自信回復」して“ホッ!”としたと言う。 為末も強豪を相手に48秒66を記録3位だった。

(望月次朗)

Copyright (C) 2005 Agence SHOT All Rights Reserved. CONTACT