廣瀬永和コーチ
2時間18分30秒前後の力はついてきた 廣瀬永和コーチ談 「ベルリンに入って最も心配してきた天候は、変わることなく異常に暑過ぎた!野口の最大の難敵は気温だけでしたので、もう少し低かったら、多分、18分台は出たと思いますが・・・。・・・たら・・・を言ったらきりがありません。これはあくまでわれわれの欲を言っているだけです。でも、練習の成果から見れば、当然18分台に突入してもおかしくはありません。まあ、気象条件が合えば、18分30〜40秒前後で行くかと期待していましたが、あくまで練習量、質共にしっかり消化できた上から予測を立てたものです。やはり、マラソンにはちょっと暑かったし、後半、あの気象条件下であのペースで行くともっとへばると思ったのですが、後半も急激に落ちることなく、しっかりといいタイムを刻んできましたので、やはり野口の力はかなり付いてきたことを証明できたと思います。ぼくも自転車で野口グループと伴走しましたが、レース中にアドバイスすることは殆どありませんでした。実はレース2日前、テクニカルディレクターらとの打ち合わせで、ペースメーカーを紹介されましたが、いずれも自己最高記録が2時間17〜18分台のランナーであることが分かりました。これには納得できません。少し慌てました。野口の設定タイムとペースメーカーらの最高記録がほぼ同じなら、希望するペースで走ることは到底難しいと判断。主催者と交渉の末、自己記録が早い選手をつけることで4人になった経緯があります。最後に決まった選手は自己記録が10分のケニア選手。ポーラ・ラドクリフガ世界記録を出した時のペーサーと言うことでした。結局、レース前の心配が現実になり、最初15kmを走る予定の選手が、10km手前で走るのを止めてしまい。次のペースメーカーのランナーも約束の距離を走らないで途中棄権しています。もし、主催者側の言うなりにやっていたら・・・どうなったか分かりません。中間点では、18分台に入るペースでしたが、この気象条件なら、後半暑さのためにペースダウンすることは予想していました。カーブも多く、意外に路面が硬く、脱水状態ではなく、あのペースで前半を通過すると、後半足にくるのはある程度予想できることです。やはり、気温が高かっただけ足にきたと思います。あれこれマイナス部分を考慮すると1分は大袈裟ですが、気温がもう少し低ければ少なくとも20秒ぐらいは速く走れたでしょうか。(笑い)」 「レース前の目標タイムは2時間19分前後を設定していました。野口は今まで総てのレースは勝負がポイントで、記録への挑戦は今回が初めての経験でした。過去3回の、いずれも大きな大会でレース前の予想が大体当たってきました。それは総て練習過程から割り出すことができます。アテネ五輪前の練習を消化できれば、ベルリンでどの位のタイムで走れるか、野口は練習過程でレースをある程度読める選手です。今まで必ずそのような結果を出してきた非常に失敗の少ない選手ですから教え甲斐がありますね。今回、いかにイーブンペースを刻むことが大切かは、練習過程で総て習得していました。野口は日本記録を破るある程度の自信があったと思いますが、記録へのチャレンジは初めてのこと。多少の不安もあったのでは・・・?残り5kmからスピードダウンした後半の走りの克服は、今後の課題にもなると思いますし、練習内容も考えなければならないでしょうし、今までやってきた練習以上のキツイ形でやるのが良いのか、当然、今後考えてゆかなければならないと思います。野口は35kmを過ぎてから最後まで持続する精神力の強さを持っていることを見せてくれました。苦しくなっても同じよなリズムできちんとタイムを刻んでくる才能がありますし、それは彼女の強さだと思います。北京五輪まであと1回ぐらい記録へのチャレンジができると思います。ですから、記録へのチャレンジを次にする場合、今より1kmあたり5秒ペースアップするのには、どのような感じでするのが良いか、少しは実感を掴んだと思います。北京はまた暑いと聞いています。そこまでは今現在考えるとことではなく、今回のレースが終わり、ひとつの日本新記録達成が終えたのですから、少し休んでから次の目標を定めて新しいチャンスを決めて行きます。もちろん、出場するレースごとに、練習内容、目的が変わります。例えば、記録向上には、10000mのスピードが向上しないとなかなか難しいと思います。野口は練習のきつさ、目的達成のためには俄然と闘志を出して闘い、逃げないタイプです。野口はまだ発展途上の選手だと思いますが、これまでに五輪優勝、世界選手権2位、日本記録達成など、かなりの実績を残してきました。今後、彼女の活躍するチャンスの幅が狭まり、目標とするものが非常に限られてきました。新しい目標にチャレンジするためにはさらにきつくなる練習にも耐えてやってゆかなければなりません。それに野口は十分絶えられる強靭な精神力の持ち主です。故障がなければ・・・、やってくれるでしょう。気候さえよければ次の機会にもう一度記録へチャレンジさせたいと思います。」 (月刊陸上競技社誌05年11月号掲載) |
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