「ゴーデンリーグ」ビースレット大会
06年ゴールデンリーグ波乱の開幕 恒例の今季緒戦の「ゴーデンリーグ」ビースレット大会が、オスローで6月2日に開幕された。湾からの冷たい風、小雨が降り始めた不順な天候だった。今季のゴールデンリーグ種目は男子は100、400,1500,3000または5000m,槍投げ、走り幅跳び、女子は100、400、3000または5000m、100mh、走り高跳びだ。これらの優勝者に20点、以下16,14と各順位ごとに2点差がつくシステムだ。ゴールデンリーグ、通称GLのオスロー、パリ、ローマ、チューリッヒ、ブリュッセル、ベルリン大会の総合最高得点者に与えられる「ジャックポット」と呼ばれる賞金100万ドル争いが開始された。オスローGL種目のハイライトに焦点を当てた。 男子100、パウエル、ダントツの強さで優勝 「世界最速男」のアサファ・パウエル(ジャマイカ)は、オスローの変わりやすい天候に「寒い!」とこぼしていた。予選1組のメンバー、テレンス・トラメル(USA)アジズ・ザカリ(ガーナ)、ジェイソン・ガードナー(英国)らを全く相手にせず、+1.16mの追い風で9秒97で楽勝して予選通過。決勝に記録への期待が掛かった。パウエルの走りの特徴は、30mを過ぎてからの一見ポンポン跳ねるように軽快でリズミカルな足の動きだ。あたかも流しているような力を抜いた走法で一挙に加速。 決勝は予選から2時間後。やはり蒼々たるメンバーが揃った。5コースにパウエル,4コースにブランソン(USA)、6コースにクロフォード(USA)、他に、フラター、ポニヨン、バ−ンズ、ザカリ、トーマスらだ。しかし、「白夜」の100m決勝は、風向きが変わり向かい風0.9m。パウエルはレース後、正直に「横にクロフォードがいたので気になり硬くなった」と告白。期待された記録が伸びなかった。と言ってもこの夜だけサブ10を2度記録。只者ではないが、期待された記録を気象コンディションの所為にしないのが良い。パウエル対ガタリン戦は、日増しに注目を集めているが、まだなにも決まったものはない。 男子400m ジェレミー・ウォリナー、圧勝 7コースのブラウン(バハマ)が最初から飛ばして先行したが、残り60mでウォリナーがギアーチェンジ。ウイリアムソン、メーリット、クリストファらに大差をつけて圧勝。ダントツの実力差をまざまざと見せ付けた。かれは「今季のGLジャックポット優勝を狙う。これに勝てば五輪、世界選手権優勝に、新しいタイトルが加わる。ぼくもクライド・ハートコーチも世界記録を破る自信がある。昨年より強く、早くなっている。今季の目標は43秒台前半の記録。」と、勝って当然としていた。ジャックポット優勝最右翼の一人だ。 男子5000m、ベケレ敗れる 弟のタリクがペース設定。その直ぐ後に兄のケネニサが続き、20数名の集団を引っ張った。最後の1周、トップ集団にベケレ兄弟、ソンゴック、キプロップ、ソイ、キゲンらがトップ争い。ケネニサが飛び出し、だれもが優勝決定と思ったが、250mを残してケネニサのスピードが伸びず。後方から追ってきたボニフェース・ソンゴックが、最後のカーブで常勝のケネニサを捕らえて抜き去った。ソンゴックは「勝ったことが信じられない!」と自分で驚いていた。これでケネニサ不敗神話が崩れたと同時に、ジャックポット優勝の望みも遠ざかった。 槍投げ、地元の英雄ノルウエー新記録で優勝 あたかも世界選手権か五輪並みのメンバーを揃えた。5投目、アテネ五輪優勝者、地元の人気者アンドレアス・トーキルドセンは、会心の91.59mを投げて同国新記録を樹立して優勝。「まあ力で投げている。記録はまだ伸びる」と、記録更新を約束した。 走り幅跳び、中米のニュースター、サラディノ優勝 パワースピードジャンパーの全盛期に、久しぶりに俗に言う「バネ」でポーンと上がるジャンパー。アーヴィング・サラディーノ(パナマ)が8.53mを跳んで2位の五輪、世界選手権優勝者のドゥワイトに30cm以上の大差で優勝。しかし、この種目のトップ数人の実力は伯仲している。大会ごとに優勝者が変わる可能性ある。 女子100m、ファーガソン優勝 まだ、この種目にトップ選手が勢ぞろいしてこない。ファーガソンが11秒22で優勝したものの、今後、この種目も優勝者は混沌としてくることが予測される。 女子400m、絶好調で飛び出したりチャーズ リーチャーズは「今季最大の目標は、ジャックポット優勝です。昨年より力をつけているので、記録も48秒台を狙える」と、自信満々。 女子5000m、ティルネシ・ディババ、自己新記録で優勝 エジェガイェウ、ティルネシ・ディババ姉妹が好記録で2、1位を占めた。39歳のエディ・マサイ(ケニア)が積極戦法でペースアップが記録に繋がった。ティエウネシは、最後の400mを57秒59で回って自己記録を更新し優勝。ジャックポット優勝候補筆頭だろう。 女子走り高跳び ベルクビスト、スレサレンコ、チチェローワ、ハワードらの大物選手が揃ったが、全体に寒さのためか首を傾げるほど全員が低調だった。優勝は198cmを跳んだバラシッチ(CRO)とタイ記録で7種目専門選手のエレビュート(ベルギー)が2位。この種目も実力が紙一重なので優勝者は転々とするだろう。 (06年月刊陸上競技誌7月号掲載) |
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