ディファー、自らの世界記録を大幅に更新、夢の13分台突入か メセレト・ディファー(エチオピア、23歳)は、掲示板に目線を走らせ「オーッ!」叫びゴールに飛び込んできた。昨年、自らの樹立した世界記録14分24秒53秒を大きく短縮する14分16秒63の世界記録の瞬間だ。天を仰ぎながら胸に大きく十字を切って神に感謝。そのままトラックに倒れるようにして屈み、膝を着いて再び胸で十字を切った。見慣れたエチオピア選手の、ゴール直前後に行う神に感謝するセレモニーだ。ゴール後のディファーは、なぜか気持ち悪くなって吐く。お決まりのカメラマンの注文で時計掲示板の前で記念写真。スタンドの最上階に座っていたIAAFディアック会長も、フィールドに降りてディファーを祝福した。 ディファーがウイニングランを始めると、第2コーナー付近のスタンドに集結したエチオピア人集団に捕まった。よほど嬉しかったのだろうか、抱きたつかれ、かなり荒い祝福の洗礼を受けながらもディファーは笑顔を絶やさなかった。この大会2週間前、アディス・アベバの国立競技場で福士加代子選手の取材中、エチオピア・長距離ナショナルチーム選手の先頭にたって練習していたディファーと話した。「調子はいいので、オスローGLかオストラバGPで5000mを走る。」と言った。「世界記録に挑戦か?」の問いに、「そうね、気象条件が良かったら。」と、人懐こい笑顔で返答してきた。 この夜、白夜のオスローは、長距離レースに最適な条件に恵まれた。ほぼ無風、気温は18度ぐらいだったろう。小柄なディファーが、世界最強選手が集結する07年ゴールデンリーグ緒戦の輝けるヒロインだった。 ディファーは「今年は室内3000mで8分23秒72の世界新記録を出している。昨秋から心身ともに充実している。今季最大の目標は世界選手権5000mで優勝することだが、アフリカ選手権、条件が良ければ世界記録へはいつでも挑戦したい。簡単なことではないが、わたしはまだ世界選手権で優勝していないので、大阪で勝って、北京につなげて五輪5000m2連勝をしたい。オスローかオストラバで記録への挑戦を予定していたが、今日は気象条件がレースに最適。ペースメーカーのオルガ・コムヤギナ(ロシア)も良かった。2000mを5分42秒60の理想的なハイペースで通過。後半、独走し世界記録更新の自信もあったが、18秒か20秒ぐらいを予想していたので、まさか16秒とは予想外の結果で大変に嬉しい。もちろん、今後、10000mに距離を伸ばすことを考えてもいるが、それはおそらく北京五輪後になるでしょう。」 ちなみに、シドニー五輪5000mで17歳で出場したヴィヴィアン・チェルイヨット(ケニア、23歳)は自己記録を20秒以上短縮、ディファーの世界記録を破る14分22秒51で2位。 ゴールデンリーグ緒戦で活躍した選手を列挙してみよう 男子100mのアサファ・パウエル(ジャマイカ、25歳)は、懸念されたスタートのタイミングがよかった。圧倒的な強さで9秒94で優勝。かれとしてはごく普通の記録だったが、パウエルはこう言った。「スタートが良かった。サブ10秒で走れたのはいい。まだシーズンは始まったばかりだ。」 世界男子三段跳び選手が、あたかも世界選手権決勝のように勢ぞろいした。早くも番狂わせが起きた。手術後のクリスチャン・オールセン(スエーデン、27歳)に精彩がなく、室内欧州選手権で優勝したヒリップ・イドウ(英国、28歳)が、2回目の跳躍で17.36mを跳んで、2cm差で競り勝った。 男子槍投げでも、世界トップ選手が競った。テロ・ピトカマキが地元の英雄、五輪優勝者のアンドレアス・トーキルドセン(25歳)と今季世界最長90.17mを投げたブリュアー・グリアー(アメリカ、31歳)を抑えて88.78mを2回目に投げて優勝。 円盤投げの第一人者、ヴィリギリユス・アレクナ(リトアニア、35歳)は、2回目に70.51mを投げて、生涯15回目の70m越しを記録。連勝記録を31回と伸ばした。 女子400mでただ一人サブ51秒の50秒26で完勝したサンヤ・リチャーズ(アメリカ,22歳)は、あたかも練習の一環であるよな口ぶりだった。「今年はジャックポット、大阪では200,400mの2冠を狙って行く。」これで05年8月10日以来の400m連勝記録を20と伸ばした。 女子走り高跳びイェレナ・スレセレンコ(ロシア、25歳)は、これまた世界の強豪と競り勝ち2.02mを跳んで優勝。 棒高跳びのイェレナ・イシンバイェワ(ロシア、25歳)は、まだ本調子とはいえないが、それでも4.85mをクリアーして第一人者の実力を示した。 |
||
Copyright (C) 2005 Agence SHOT All Rights Reserved. |