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世界陸上直前!
〝アジアの飛龍〟世界陸上初Ⅴを!五輪制覇、世界記録樹立、残る標的はOSAKAで射とめる

中国人の劉翔がアテネ五輪男子110mハードルを12秒91の世界タイ記録(当時)で制覇し、世界中の人が驚いた。21歳のアジアの青年が、110mハードルというアメリカ勢独占状態の種目において、「脚の短いアジア人には苦手」という観念を打ち破った、いわば劣等感を覆す快挙だったからでもあろう。

その瞬間から、彼の人生は急変した。劉翔の動くところ、中国取材陣が必ず多く付いて回る。国内ではボディーガードなしでは自由に外出できず、自分で車を運転すればファンやマスコミに囲まれて交通渋滞を起こす。試合以外にスポーツ学校寄宿舎から出ることはめったにない。出たくても出られないのが現状と言える。バスケットボールのNBA選手、姚明(ヤオミン)に劣らぬ中国スポーツ界のスーパースターだ。

劉翔は1m97の記録を持つ元走高跳選手。1998年の春、孫海平コーチにハードル転向を勧められたが、その年の夏、教育熱心な家族に猛反対されて一時、スポーツを断念。しかし、コーチの懸命な説得に父親が折れ、劉翔は好きなスポーツを続けることができた。  16歳で本格的にハードルを始めてから2年後、中国全国運動会で優勝。02年にはジュニア世界記録を24年ぶりに更新する13秒12をマークし、03年パリ世界陸上で銀メダル、04年アテネ五輪で金メダル、05年ヘルシンキ世界陸上で銅メダルを獲得。そして、06年のローザンヌGPでは12秒88の世界新記録を樹立した。

五輪、世界陸上を合わせて5個の金メダルを獲得している名ハードラー、アレン・ジョンソン(米国)は「劉翔は身長の割にストライドが短く、ハードリングに最適だ。しかし、これほど急激な成長を見せるとは予想しなかった」と脱帽した。ハードル王国・アメリカの選手が躍起になって劉翔を追っている。

今シーズン前半は日本やアメリカの競技会で実践を重ねた劉翔は、7月上旬からパリ、ローザンヌ、シェフィールドと欧州を転戦。7月6日のパリGLではいきなり不覚の3位(13秒15)に終わり、13秒13の同記録だった20歳のデイロン・ロブレス(キューバ)、アンワー・ムーア(米国)に先着を許したが、「この欧州転戦では勝敗、記録にこだわることなく、ハイレベルのレースで技術的な課題を改善し、刺激、レース感覚をつかむことに焦点を置いている」と孫海平コーチは余裕の構え。劉翔も「走るたびに世界新記録を期待されても困るが、記録は12秒85ぐらいまで縮めることができると思う」と頼もしい。

欧州転戦後は上海、北京合宿で調整して大阪入りする予定。「過去2回の世界陸上は2位と3位なので、大阪では是が非でも優勝したい」と話す劉翔は、「前回覇者のラジ・ドゥクレ(フランス)、若いロブレスらは侮れない」とライバルの名前を挙げた。

どこのレースに出場しても、いやおうなく世界トップ選手の挑戦が待っている劉翔。来年の北京五輪での連覇のプレッシャーを背負いながら、まずは世界陸上で初Ⅴを狙う。

 
(大阪世界陸所公式ガイド掲載)
(望月次朗)

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