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世界陸上直前! 男子400m ジェレミー・ウォリナー(米国) Jeremy Wariner
前人未到の42秒台突入か 先輩マイケル・ジョンソンの世界記録更新を!

2004年、フットボール、野球が盛んな米国テキサス州に、希に見る白人400mランナーが出現した。無名の学生、ジェレミー・ウォリナーが、室内と屋外の全米学生選手権、全米五輪トライアルで優勝。その勢いでアテネ五輪を44秒00で制し、4×400mリレーと合わせて2冠を獲得した。

続く05年ヘルシンキ世界陸上も両種目で優勝。06年はゴールデンリーグ6戦全勝を果たし、ジャックポットの賞金約3000万円を獲得した。そのGLの1つ、ローマ大会では世界歴代4位の43秒62を樹立。短期間であらゆるタイトルを制覇した。

昨年はサブ44秒を3回マークするまでに成長。大学の先輩であり、かつてのスーパースターだったマイケル・ジョンソン(米国)が1996年に打ち立て、関係者の間では「今後、塗り替えるのは不可能」とまで言われている43秒13の世界記録を更新することが現実的な目標になった。ウォリナー自身も前人未到の42秒台突入を視野に入れている。

大リーグ「テキサス・レンジャーズ」の発祥地、ウェイコのベイラー大学出身。ジョンソンを育てた名将、クライド・ハートコーチの熱心な勧誘で本格的に陸上競技に打ち込んできた。このコーチがおもしろいことを言う。
「ジェレミーの身体つき、スピードは400m選手としても短・中距離選手としても、どちらにでもつぶしの効く。400mはパワーとスピードのカクテル。彼はスピード持久力が素晴らしい。ジョンソンがピークに達したのは30歳前後だった。ジェレミーはまだ若い。時間をかけてゆっくり育てたい」

ハート・コーチは練習段階からイーブンペースで走るように指導。それがもっとも効率が良い戦術だからだ。ウォリナーの理想は、前半を20秒8から21秒で通過、後半を22秒で走り切ることだ。  ハート・コーチの配下にいるプロ選手で、ウォリナーがただ1人の白人。アテネ五輪前後、口うるさいジャーナリストから「白人スプリンターが黒人選手に対抗できるか?」と質問されたことに気分を害したが、今は誰もこのような質問をしなくなった。コーチはウォリナーを練習の虫≠ニ言う。コーチの指示に黙々と従い、プログラムを消化する。

黒いサングラスをかけ、一見、近寄りがたいクールな印象を受けるが、グラウンドから離れると人懐っこく、普通の車大好きな若者。練習後は、特別仕様に改造された愛車の最高級ベンツS600を駆ってドライビ、自慢の豪華オーディオを楽しむ。余暇は、ウェイコの自動車改造専門ガレージで過ごすことが多い。

今や世界のメジャー競技会から引っ張りだこで、「最も出場料の高額な選手」と言われるウォリナー。彼のエージェントを務めるマイケル・ジョンソンとよく比較されるが、「同じコーチ、種目だから比較されるのは当然。マイケルは僕の理想像。彼の実績、イメージを追うことは、ごく自然のことだった。これからもマイケルに追いつき追い越して、史上初めて43秒の壁を破り、後世に長く名を残す選手になりたい」と言い切る。

そんなウォリナーは今年5月に初来日し、世界陸上の会場となる長居競技場で行われた大阪GPで44秒02の今季世界最高記録をマーク。「ここのトラックは気に入ったし、世界陸上に向けて弾みがついた。8月の本番は世界のトップ選手と争える最高の舞台。100%優勝する自信があるが、好記録も狙いたい」と頼もしく語った。

 
(大阪世界陸所公式ガイド掲載)
(望月次朗)

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