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3勝目狙いのガリブ、R.チェルイヨット、新鋭ケベデの争いか

北京五輪では革命的な高速レース戦法で、ライバルたちを潰して優勝を果たし、北京五輪レース再演と呼ばれた今年のロンドンマラソンでも完勝したサムエル・ワンジル(ケニア、23歳)は、ケニア陸連から代表に選ばれたが辞退をした。世界のトップマラソン選手にとって、世界選手権で活躍しても報酬は少ない。

しかし、03,05年世界選手権制覇、五輪2位のジャウード・ガリブ(モロッコ、37歳)のベテラン参加が決定。虎視眈々と史上初の3勝目を狙っている。また、五輪3位、ロンドンでも自己新記録の2時間5分20秒、史上7位の好記録でワンジルに続いて2位に食い込んだツエガ・ケベデ(エチオピア、22歳)は、「タイトルが欲しい。世界選手権で優勝したい」と、初の世界タイトル制覇に燃えている。五輪1年前まで、田舎で薪拾いをして生活をしていた男だ。同僚の五輪4位のデリバ・メルガ(29歳)も出場。

さて、マラソン王国のケニア勢は、シカゴ、NYで優勝経験のロバート・チェルイヨット(2時間7分14秒)、ダニエル・ロノ(2時間6分58秒)、ベンジャミン・キプトー(2時間7分17秒)、アベル・キルイ(2時間5分04秒)、エマニュエル・ムタイ(2時間6分19秒)らのそうそうたるメンバーが決定した。誰が勝ってもおかしくない布陣。

男子はケベデ、メルガ、チェルイヨット、らが中心でレース展開されるだろう。いずれにしても、日本勢の苦戦は必至だ。今春ロンドンで復活の兆しを見せた佐藤敦之(中国電力、33歳)が、世界のトップ選手を向こうに回してどんな走りを見せて入賞するか期待したい。

地元期待のミキテンコ、ラドクリフ復活か、赤羽メダル獲得のチャンス

イリナ・ミキテンコ(ドイツ、37歳)は、08年ロンドン、ベルリンで2時間19分19秒の史上9人目のサブ20分突破で歴代4位に急上昇。大きくブレークした。強豪が一堂に会した今春のロンドンでも圧勝、目下3連勝中とダントツの強さだ。地元期待の優勝候補ナンバーワン。2児の母親でもあるミキテンコは、夫でコーチの元長距離選手だったアレクサンダーとともに、頂点を目指す。故郷カザフスタンの1800mの高地で合宿。「記録より勝つ走りに徹する」と、断言。

一方、疲労骨折から回復した世界記録保持者のポーラ・ラドクリフ(イギリス、35歳)が、2回目の優勝を目指して出場する。ラドクリフはこれまで10戦2敗、勝率8割の抜群の成績を上げているが、近年、故障も多く必ずしも全盛期の力強さではない。気になることは、ラドクリフは昨秋から完全にレースから遠ざかっているため、現状の調整が未知数だ。

ケニア、エチオピア、中国選手も侮れないが、ミキテンコ対ラドクリフの対決になる公算が予測される。しかし、日本代表入りに最後に滑り込んだマラソン2回目の赤羽有紀子(ホクレン、29歳)が、渋井の調子の上がらない中、どこまで上位に食い込む活躍ができるか注目したい。1児の母親、夫の周平コーチと二人三脚で、これまでの日本選手には珍しい異色な背景、発想、ライフスタイルが基盤になっている。マラソン先入観が少ないだけに、思い切り良い走りでメダル獲得チャンスを引き寄せる快走を見せて欲しい。

 
(09年月刊陸上競技9月号掲載)
(望月次朗)

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