日本男子メドレーリレー、最終種目に銅メダル獲得 第6回世界ユース選手権大会が、イタリアの北部、自然豊かな高地600mのドロミテのブレッサノーネの町で5日間(7月8−12日)開催された。この町はオーストリア国境に近いアルプス山中。夏場は避暑、冬はスキー客でにぎわう観光地だ。イタリア国内だが、ドイツ語圏の人口約2万人の異色の土地。ここに史上最多の176カ国、参加選手数1331名(男子768名、女子563名)。これまでより各国がそれなりに本腰を入れて準備をしてきたためか、史上最多の46カ国がメダル獲得、9カ国が初の世界ユース選手権メダルを獲得した。7種目において大会新記録を更新。ケニアがメダル獲得でアメリカを抜いてトップ。日本は入賞数が多かったが、最終日の少年メドレーリレーで銅メダルを獲得したのみに終わった。大会のトピックスと日本選手の活躍をあげてみた。 日本選手、史上最多入賞をあげる男子100m 男子200m 男子400m 男子3000m 男子400mh 男子棒高跳 男子10000m競歩 少年メドレー 女子100m 女子200m 女子800m 女子1500m 女子3000m決勝 女子槍投げ 女子5000m競歩 女子メドレー 大会男女最優秀選手、キラニ・ジェ−ムス(グレナダ、16歳)、ジョディ・ウィリアムス(英国、15歳)の活躍は特筆されよう。 キラニ・ジェームス(グレナダ、16歳)は、2年前オストラバで開催されたユースで2位、昨年のジュニア世界選手権でも46秒96を記録して2位だった逸材だ。人はグレナダの「ボルト2世」と呼ぶ。(注:グレナダはカリブ海のアンティル諸島の南部、南米に近いところに位置する、人口11万人程度の小さな元英国植民地。)これらの世界選手権大会で常連の選手。来秋からアメリカに留学。最初に出場した400mは45秒24の自己新記録で圧勝。最終日、ウサイン・ボルトの持つ大会記録20秒40を更新できなかったものの、200mで21秒05を記録して優勝。「高地のためかここは寒い。400m3本、200m4本走ったので非常に疲れた。400mで今季ユース世界最高記録を出すことができなくて失望したが、200mで優勝して2冠を獲得したので満足だ。ボルトと比較されるのは嬉しいが、これから努力して自分の歴史を作りたい。アメリカ選手と比較すると、カリビアの小国のグレナダはあまり恵まれた環境ではない。2冠獲得を誇りに思う」 ジョディ・ウィリアムス(英国、15歳)は、今大会で急成長したようなスプリンター。100mを11秒39(大会前の記録は11秒48),200mでも23秒08(23秒25)の自己新記録を大幅に破って2冠優勝。男女スプリンターが2冠獲得したのは、第4回大会の少年100,200mで優勝したハリー・アイキネス−アリーテイ(英国)以来の快挙。「今大会が国際大会初出場。100m決勝で自分のタイムを見て驚きました。まさか今季世界最高記録で優勝するなんて夢にも思わなかった!とても信じられないことです。予選ではかなりナーバスになったが、回が進むに連れて慣れてきました。200mでもまさか優勝できるなんて、こんな素晴しいことが2度も起きてしまったわ。言葉に表すことができません。私の趣味は陸上競技。今後、陸上競技に専念して世界のトッププロ選手としてやってゆきたい。」 男子8種目優勝のケヴィン・マイヤー(フランス、16歳)は、走り高飛びで2.04m、走り幅跳びでも7.24の非凡なジャンプ力を見せて圧勝。また、7種目のカタリナ・トプソン(英国、15歳)は、走り幅跳びで6.31mを跳んで走り幅跳び優勝記録を上回るジャンプを見せた。共通していることは、この世代の選手は投擲などの技術的な習得よりも、素材の優劣の争いだということだ。 異色選手の活躍が注目された少年走り幅跳びでは7.65mの自己新記録で優勝、続く三段跳びでも自己新記録15.70mで2位になったスパナラ S.N.A(Supanara Suksawasti Na Ayutayaの略、タイ、17歳)は、スワングポール・コーチいわく、「ラマ王4世の5代目に当たる王家の血を引いた選手」コーチと2人で参加。あらゆる世界選手権でタイ選手のメダル獲得は史上初の快挙。 なお、中国選手の活躍は予想通りだったが、アジア勢の男子棒高跳びで韓国、同槍投げで台湾、男子走り幅跳び、三段跳びでタイ、男子円盤投げでシリア、男子走り高跳びでイスラエル、女子槍投げでウズベキスタン、サモアらの選手らが優勝、上位入賞するなどの活躍があった。 最後に、地元イタリアも、3個のメダル獲得、少女走り高跳びで1.87mを跳んで優勝、男子100mで3位に食い込む健闘を見せた。 原田康弘監督談「今大会はメダル獲得ひとつに終わったものの、総合的な入賞者の数などは過去最高の成績です。大会が始まる前、日本選手が一体どの種目でメダル獲得ができるチャンスがあるか予想してみたのです。すると、平均的に入賞可能性はあるだろうがメダル獲得の可能性はとび抜けて強い選手がこれまではいたが、今回はそのような選手が不在なので非常に難しく見えました。それだけに未知の部分で活躍して、ひとつでもメダルを獲得すればいいだろうと思っていました。世界ユース選手権大会も早いもので6回目になります。今までより各国協会が高い目的意識で参加してきていることです。日本選手がメダル獲得可能な種目はいくつか上げられますが、今回はこれまでにない難しさを感じました。大会を通しての印象は、町を上げての歓迎ぶり、素晴しい環境で競技を行うことができました。町のどこにでも徒歩で行ける距離。欲を言えばきりがないのですが、仮説のサブトラックで両サイドから選手が走る混乱が起きるようなことがありましたが、自然豊かな環境は素晴しかった。 ただ、少年100m準決勝2組に出場した九鬼巧(和歌山北高校)が、4位に入った中国選手と同タイム10秒61で5位になって一度は公式に落選の発表がされた。そこで正式に写真判定を見せて貰うように要求すると、気がつかなければそのまま通ってしまったような単純だが非常に重要な審判ミスが見つかったのです。最終的に、九鬼が0.01秒差をつけて判定を覆して4位に繰り上がり、決勝進出できて6位に入賞したのですが、このようなケースはやはりわれわれが注意しなければそのままうやむやになってしまったことです。 来年、シンガポールで開催される「ユース五輪」が新設されます。ユース世代の多くの選手と今の中学3年生をベースにした選手が選考対象になります。そのプレユース五輪のような形でここに来る前、世界ユースよりちょっとレベルが低くなりますが、日本選手はシンガポールで開催されたアジアユース選手権で金メダル4個獲得しています。かなりいい形でユース五輪は戦えるのではないかと思います。世界各国とも、ユースに「五輪」と名前がつくとまた受け入れるほうも大きく違ってくると思います。学校、県のほうも反応が違ってくるし、五輪ですからJOCが絡んでくるので、IAAFの絡みも入ってくるし、陸連だけで選手選考や派遣することができないでしょう。選手強化、選考などを含めたもろもろの情報などを収集して、現場の先生方にはやく詳しい情報を知らせることが重要だと思っています」 |
||
Copyright (C) 2005 Agence SHOT All Rights Reserved. |