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日本男子メドレーリレー、最終種目に銅メダル獲得

第6回世界ユース選手権大会が、イタリアの北部、自然豊かな高地600mのドロミテのブレッサノーネの町で5日間(7月8−12日)開催された。この町はオーストリア国境に近いアルプス山中。夏場は避暑、冬はスキー客でにぎわう観光地だ。イタリア国内だが、ドイツ語圏の人口約2万人の異色の土地。ここに史上最多の176カ国、参加選手数1331名(男子768名、女子563名)。これまでより各国がそれなりに本腰を入れて準備をしてきたためか、史上最多の46カ国がメダル獲得、9カ国が初の世界ユース選手権メダルを獲得した。7種目において大会新記録を更新。ケニアがメダル獲得でアメリカを抜いてトップ。日本は入賞数が多かったが、最終日の少年メドレーリレーで銅メダルを獲得したのみに終わった。大会のトピックスと日本選手の活躍をあげてみた。

日本選手、史上最多入賞をあげる

男子100m
・ 山縣亮太(修道高校)は第一次予選10秒71、九鬼巧(和歌山北高校)も10秒74で1位通過。同じ日の夕方、第2次予選が行われた。山縣は10秒62の1位、九鬼も10秒63で1位通過。
・ 準決勝は1日後、山縣が1組10秒61で2位の決勝進出を決め、九鬼は2組で4位の中国選手と10秒61のタイ記録で5位と発表されたが、原田監督らの抗議で写真判定が覆り、九鬼は4位に繰り上がり決勝進出。
・ 準決から3時間後、決勝戦が行われた。山縣が10秒80で4位、九鬼は10秒88で6位に入賞した。

男子200m
・林雅人(一宮高校)は、第1次予選を21秒98の2位、勝山和成(足羽高校)は予選2組で21秒90の1位通過。準決勝で勝山は21秒69で5位、林は2組5位の21秒79で共に敗退。

男子400m
・ 籾木勝吾(宮崎工業高校)は48秒56、茅田昂(修道高校)も48秒88で予選通過。準決勝で籾木は47秒51の4位で決勝進出。茅田は3組48秒59で4位敗退。籾木は決勝で健闘、48秒01で7位入賞した。

男子3000m
的野遼太(諫早高校)は1組6位の8分30秒53、西池和人(須磨学園高校)は、予選3組で2位の8分28秒07で共に通過。決勝では西池が8分16秒73の自己新記録で8位入賞。的野は8分29秒09で13位だった。的野遼太(諫早高校)は1組6位の8分30秒53、西池和人(須磨学園高校)は、予選3組で2位の8分28秒07で共に通過。決勝では西池が8分16秒73の自己新記録で8位入賞。的野は8分29秒09で13位だった。

男子400mh
・ 加藤誠也(松山高校)は、予選53秒13、準決勝52秒63の4位で通過。決勝は52秒10で4位と健闘した。

男子棒高跳
・ 川島優(不動岡高校)、松澤ジアン成治(高遠高校)とも、予選を4.85m跳んで通過。決勝で川島が5mを跳んで5位入賞。松澤は4.80mで9位に終わった。

男子10000m競歩
・仁和光一(星陵高校)は44分32秒61で12位、本田健人(滋賀学園高校)は失格だった。

少年メドレー
日本チーム(九鬼、山縣、茅田、籾木)は1分53秒58の今季世界最高記録で1位通過。決勝は、アメリカがダントツの強さを発揮して圧勝。日本チームは1分52秒82で3位。今大会最終種目で唯一のメダルを獲得した。
1走の九鬼は「最後だから思い切って行きました。スタートも良かった」2走の山縣は、「バトンタッチうまく言って気持ちよく走れた」、3走の茅田「山縣からいい形でバトンを受けたので、がんばった」アンカーの籾木は、「前半を飛ばしすぎたのか、最後の50mで抜かれてしまった」

女子100m
中尾優里(和歌山北高校)は、予選第3組に出場、12秒24で通過。第2次予選1組に出場12秒18の6位で敗退。

女子200m
・ 予選4組に出場した藤田知香(大分舞鶴高校)は、25秒17の4位で予選通過。同じく5組に出場した山本優香(大分)は、25秒07の3位で通過。
・ 準決勝2組に出場した藤田は、25秒23の8位で敗退。同じく3組に出場した山本は、24秒88の6位で敗退。

女子800m
松崎璃子(市立船橋高校)は、予選1組に出場。2分9秒54の4位で予選通過。同じく。予選3組に出場した高橋満里(東大阪敬愛高校)は、2分11秒03の3位で予選敗退。
・松崎は準決勝2組の2分08秒80で決勝進出ならず。

女子1500m
・赤松眞弘(興譲舘高校)は第1次予選1組を4分20秒47、4位で予選通過。同じく3組で池田睦美(須磨学園高校)は、4分34秒65で予選通過を果たした。
・決勝で池田は4分23秒28秒で6位、赤松は2分23秒99で8位の入賞を果たした。

女子3000m決勝
久馬萌(綾部高校)は、「しっかり前についてゆこうと思ったが、予想以上にペースが早かった」と。健闘して5位に入賞。久馬遙は9分54秒49で12位だった。

女子槍投げ
・ 佐藤友佳(東大阪敬愛高校)は、予選1組で46.84mを投げて6位で通過。同じく予選2組で金原莉沙(袋井高校)は、43.45mを投げたが予選通過ならず。
・ 佐藤は、中1日置いての決勝で48.14mを投げて9位だった。

女子5000m競歩
鳥羽詩織(長野東高校)は、23分28秒76で7位、播磨奈々恵(桐生女子高校)は、23分34秒89で8位の入賞を果たした。

女子メドレー
・ 予選3組に出場した日本チーム(中尾、藤田、山本、高橋)は、今シーズンベストの2時間11分11の3位で予選通過。決勝は2分10秒27で8位だった。

大会最優秀選手の活躍

大会男女最優秀選手、キラニ・ジェ−ムス(グレナダ、16歳)、ジョディ・ウィリアムス(英国、15歳)の活躍は特筆されよう。

キラニ・ジェームス(グレナダ、16歳)は、2年前オストラバで開催されたユースで2位、昨年のジュニア世界選手権でも46秒96を記録して2位だった逸材だ。人はグレナダの「ボルト2世」と呼ぶ。(注:グレナダはカリブ海のアンティル諸島の南部、南米に近いところに位置する、人口11万人程度の小さな元英国植民地。)これらの世界選手権大会で常連の選手。来秋からアメリカに留学。最初に出場した400mは45秒24の自己新記録で圧勝。最終日、ウサイン・ボルトの持つ大会記録20秒40を更新できなかったものの、200mで21秒05を記録して優勝。「高地のためかここは寒い。400m3本、200m4本走ったので非常に疲れた。400mで今季ユース世界最高記録を出すことができなくて失望したが、200mで優勝して2冠を獲得したので満足だ。ボルトと比較されるのは嬉しいが、これから努力して自分の歴史を作りたい。アメリカ選手と比較すると、カリビアの小国のグレナダはあまり恵まれた環境ではない。2冠獲得を誇りに思う」

ジョディ・ウィリアムス(英国、15歳)は、今大会で急成長したようなスプリンター。100mを11秒39(大会前の記録は11秒48),200mでも23秒08(23秒25)の自己新記録を大幅に破って2冠優勝。男女スプリンターが2冠獲得したのは、第4回大会の少年100,200mで優勝したハリー・アイキネス−アリーテイ(英国)以来の快挙。「今大会が国際大会初出場。100m決勝で自分のタイムを見て驚きました。まさか今季世界最高記録で優勝するなんて夢にも思わなかった!とても信じられないことです。予選ではかなりナーバスになったが、回が進むに連れて慣れてきました。200mでもまさか優勝できるなんて、こんな素晴しいことが2度も起きてしまったわ。言葉に表すことができません。私の趣味は陸上競技。今後、陸上競技に専念して世界のトッププロ選手としてやってゆきたい。」

男子8種目優勝のケヴィン・マイヤー(フランス、16歳)は、走り高飛びで2.04m、走り幅跳びでも7.24の非凡なジャンプ力を見せて圧勝。また、7種目のカタリナ・トプソン(英国、15歳)は、走り幅跳びで6.31mを跳んで走り幅跳び優勝記録を上回るジャンプを見せた。共通していることは、この世代の選手は投擲などの技術的な習得よりも、素材の優劣の争いだということだ。

異色選手の活躍が注目された

少年走り幅跳びでは7.65mの自己新記録で優勝、続く三段跳びでも自己新記録15.70mで2位になったスパナラ S.N.A(Supanara Suksawasti Na Ayutayaの略、タイ、17歳)は、スワングポール・コーチいわく、「ラマ王4世の5代目に当たる王家の血を引いた選手」コーチと2人で参加。あらゆる世界選手権でタイ選手のメダル獲得は史上初の快挙。

なお、中国選手の活躍は予想通りだったが、アジア勢の男子棒高跳びで韓国、同槍投げで台湾、男子走り幅跳び、三段跳びでタイ、男子円盤投げでシリア、男子走り高跳びでイスラエル、女子槍投げでウズベキスタン、サモアらの選手らが優勝、上位入賞するなどの活躍があった。

最後に、地元イタリアも、3個のメダル獲得、少女走り高跳びで1.87mを跳んで優勝、男子100mで3位に食い込む健闘を見せた。

原田康弘監督談

「今大会はメダル獲得ひとつに終わったものの、総合的な入賞者の数などは過去最高の成績です。大会が始まる前、日本選手が一体どの種目でメダル獲得ができるチャンスがあるか予想してみたのです。すると、平均的に入賞可能性はあるだろうがメダル獲得の可能性はとび抜けて強い選手がこれまではいたが、今回はそのような選手が不在なので非常に難しく見えました。それだけに未知の部分で活躍して、ひとつでもメダルを獲得すればいいだろうと思っていました。世界ユース選手権大会も早いもので6回目になります。今までより各国協会が高い目的意識で参加してきていることです。日本選手がメダル獲得可能な種目はいくつか上げられますが、今回はこれまでにない難しさを感じました。大会を通しての印象は、町を上げての歓迎ぶり、素晴しい環境で競技を行うことができました。町のどこにでも徒歩で行ける距離。欲を言えばきりがないのですが、仮説のサブトラックで両サイドから選手が走る混乱が起きるようなことがありましたが、自然豊かな環境は素晴しかった。

ただ、少年100m準決勝2組に出場した九鬼巧(和歌山北高校)が、4位に入った中国選手と同タイム10秒61で5位になって一度は公式に落選の発表がされた。そこで正式に写真判定を見せて貰うように要求すると、気がつかなければそのまま通ってしまったような単純だが非常に重要な審判ミスが見つかったのです。最終的に、九鬼が0.01秒差をつけて判定を覆して4位に繰り上がり、決勝進出できて6位に入賞したのですが、このようなケースはやはりわれわれが注意しなければそのままうやむやになってしまったことです。

来年、シンガポールで開催される「ユース五輪」が新設されます。ユース世代の多くの選手と今の中学3年生をベースにした選手が選考対象になります。そのプレユース五輪のような形でここに来る前、世界ユースよりちょっとレベルが低くなりますが、日本選手はシンガポールで開催されたアジアユース選手権で金メダル4個獲得しています。かなりいい形でユース五輪は戦えるのではないかと思います。世界各国とも、ユースに「五輪」と名前がつくとまた受け入れるほうも大きく違ってくると思います。学校、県のほうも反応が違ってくるし、五輪ですからJOCが絡んでくるので、IAAFの絡みも入ってくるし、陸連だけで選手選考や派遣することができないでしょう。選手強化、選考などを含めたもろもろの情報などを収集して、現場の先生方にはやく詳しい情報を知らせることが重要だと思っています」

 
(09年月刊陸上競技9月号掲載)
(望月次朗)

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