ケネニサ・ベケレ（エチオピア、27歳）は、北京五輪2冠獲得に続く、世界選手権史上初の5000，10000ｍ2冠を獲得した。

「世界選手権4連覇達成することができたこれ以上の喜びはない。03年大会で出した26分49秒57を破る２６分４６秒３１の大会新記録を更新できた。前半はそれほど早いペースではなかったが、タデッサが後半先頭に立ってからペースアップ。かれの背後について行き、最後の1周で勝負を仕掛ける作戦だった。5000ｍ出場は明日になってから決める」

5000ｍ出場を決定した裏に、エチオピア勢の予想外に優勝が少ないことからベケレ出場にプレッシャーが掛かったと言う。故障のティルネッシュ・ディババ不出場が響き、得意のはずの種目で女子優勝はゼロ。常勝を課せられたプレッシャーは厳しい。ベケレ自身も北京五輪に続く史上初の２冠獲得、エチオピア選手初の５０００ｍ優勝に挑戦の意欲を当然ながら持っていただろう。

ベケレの強敵は、前回1500,5,000ｍ2冠優勝のスピードとレース巧者のベルナード・ラガート（ＵＳＡ，35歳）だ。今季のローマＧＬ3000ｍで手合わせをしているが、ベケレはスタートからハイペースで独走。ラガート潰しが成功して圧勝した経験がある。

しかし、ベケレはスタートから先頭に立ってスローペース。短期間に20ｋｍの距離を世界のトップ選手と走るのはきついだろうが、10000ｍの走りと全くの逆を突いた。誰もが前に出ようとしない。ベケレは最終回を告げる鐘が鳴ってキックして逃げた。ラガートらが懸命に追い、ラガートとホームストレッチで並んだ。ベケレ、ラガートの一騎打ち。しかし、ベケレは最後の余力でラガートを突き放して2冠獲得に成功した。

「きつかった！が、出場してよかった。5000mは最高の走りを終えて2冠獲得を達成。これ以上の喜びはない。今日のレース作戦は非常に良かった。この種目で優勝した最初のエチオピア選手。応援してくれた観衆に感謝したい。このレースは忘れられない。ラガートとの対戦は、この遅いペースの一騎打ちは負ける気がしなかった。スタートから先頭に立ったのは、スローペースをキープするためだった。」

ベケレの作戦に満々としてやられたラガーとは、「最後の100ｍで勝敗が決まった。ベケレのほうが強かった。引退どころかロンドン五輪を目指す」と表情は明るかった。