陸上競技の男子１マイル（１６０９ｍ）で史上初めて４分の壁を破った伝説の選手、ロジャー・バニスター卿（イギリス、88歳）が３日、死去した。１９５４年５月６日、オックスフォードで１マイルを３分５９秒４で走り、当時人類は不可能と考えられていた４分を切る偉業を達成した。

1948年ロンドン五輪1500mに代表に選ばれたが代表辞退。1952年ヘルシンキ五輪1500mに出場して3分46秒30の英国連邦新記録を樹立したが4位。メダル獲得ならず。

1953年に頭角を現してきた新鋭のジョン・ランディ（オーストラリア）が1953年1月に4分02秒4，2月に4分04秒02，4月に4分04秒6と着々と記録を伸ばしてきた。南半球のシーズンが終われば北欧で世界新記録に挑戦すると公言。
それを知ったバニスターががぜんと挑戦意欲に駆られて猛練習。ランディが欧州に来て1マイル史上初のサブ4分の壁に挑戦する前、「オレが先に！」と挑戦意欲が沸いた。

レース当日は朝から風が強かったが、不思議と風はレース直前にピタリと止んだ。大英連邦の1500ｍ優勝者のクリス・チャタレイ、後にメルボルン五輪3000m障害の金メダリストのクリス・ブレイシャー（ロンドンマラソン共同創立者）らがレースを引っ張った。
ゴール直後、場内放送が興奮気味に「4分の壁を破った！」と告げると、3000人の観衆がトラックに傾れ込んで歴史的な快挙を祝福した。

ジョン・ランディはバニスターが歴史的な世界新記録を樹立した46日後の6月21日、フィンランドで3分57秒9の世界新記録を打ち立てた。

3月3日、この日世界室内選手権大会がバーミンガムで開催中だった。かつて１マイルで世界記録をマークしたことがある国際陸連のセバスティアン・コー会長（英国）は「バニスター卿は巨大なアスリートだ。全ての選手にとって大きな悲しみの日だ」と哀悼の意を表明した。満員の観衆全員が起立、1分間の拍手で讃えた。
合掌。