■第4戦ローマ(6/6 イタリア)
ボンダレンコが復活V
イタリアのセルジオ・マタレラ大統領が「ゴールデンガラ、ピエトロ・メネア」大会の終盤の約1時間、4万人の観衆と一緒に手を叩きながら観戦した。第1コーナーと第2コーナーの中間に位置する観客席は数百人のイタリア・ブルーのそろいのユニフォームを着込んだタンベリ応援団≠ェ陣取り、復帰したジャンマルコ・タンベリ(イタリア)に大声援を送る。タンベリは不運にも2016年リオ五輪の1ヵ月前、DLモナコで落下した際に左足首の靭帯を部分
断裂する大ケガを負い、リオ五輪出場を断念しなければならなかった悲劇の男だ。
なぜか、最近のトップジャンパーに故障者が多い。踏み切り脚の右脚を故障したボーダン・ボンダレンコ(ウクライナ)、踏み切り脚の左足首の手術後から回復途上のムタズ・エッサ・バルシム(カタール)ら、それぞれがドーハ世界選手権、東京五輪を目指して、復活を期している途中だ。バルシムはまだ70%の状態だそうで、試合出場はまだ未定とか。タンベリは室内シーズンから精力的に競技会に出場しているが、まだトップフォームに戻ったとは言えないだろう。
タンべリはこの夜も地元の大観衆をバックに懸命な努力をしたが、本来のジャンプにはほど遠い2m28で4位に終わった。一方、ボンダレンコは2m31を一発でクリアして優勝を決めた瞬間、これまでクールなボンダレンコから一変、「やったー!」とばかりに身体全身で感情を表した。復活への確かな手ごたえをつかんだようだ。続く2m33は感触を確かめるように跳び、1回目を失敗すると、無理をする必要もなく残りの試技をパスした。日本勢は日本記録保持者の戸邉直人(JAL)と、衛藤昂(味の素AGF)が出場。衛藤が2m19で9位タイ、戸邉は2m15で11位だった。
新世代のスプリンター対決−ノーマン19秒70 ライルズを0.02秒抑える‐
男子200mはこの日の最注目種目。「次世代を代表するアメリカン・スプリンター」と期待される2人、5月18日のDL上海100mを9秒86(+0.9)で制したノア・ライルズと、
4月に400mで世界歴代4位タイの43秒45をマークした日系選手のマイケル・ノーマンが対決した。彼らは年齢も同じ21歳、ジュニア時代からライバルとして競い合ってきた。加えてライルズとU20世界選手権で争った100mが得意の地元のホープ、フィリッポ・トルトゥが、今季非公式ながら100mで9秒97を記録。イタリアの星≠ェ200mでどこまで通用するか、このレースは国内外の注目を集めた。
ノーマン「自分の走りに徹した」
レース前は好調のライルズが有利と予想されたが、ノーマンが絶妙なスタートから華麗なコーナーワークでライルズをリード。終盤、ライルズの強烈な追い上げを0.02秒差でかわし、今季世界最高の19秒70(+0.7)で優勝。2位のライルズも今季ベストだった。ノーマンは「勝ったこと、タイムはうれしい。自分の走りに徹したことが良かった」と笑顔だった。ライルズはスタートが今後の課題になり、スタートの進化に後半の驚異の加速が合わされば……と、今後の走りを期待する。
男子5000mではテラフヌ・ハイレ・ベケレ(エチオピア)がセレモン・バレガ(同)との僅差の接戦を制し、12分52秒98で優勝。男子400mハードルはDLレースではなかったものの、ノーマンのチームメイトであるライ・ベンジャミン(米国)が全開。47秒58の好タイムで圧勝した。同種目には日本の安部孝駿(ヤマダ電機)も出場し、49秒57で3位に入る大健闘。これからもこのレベルの試合に出場して、タフなレース経験を積むべきだろう。
女子100mは、リオ五輪スプリント2冠のエライン・トンプソン(ジャマイカ)が10秒89(+0.6)で今季世界最高記録をマークし、昨年の欧州選手権2冠のディナ・アッシャー・スミス(国)を破って優勝。同1500mは世界記録保持者のゲンゼベ・ディババ(エチオピア)が、この種目の欧州女王、ローラ・ミューア(英国)を下して3分56秒28で優勝した。