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日本男子マラソン
なぜ、日本男子マラソン選手は育たないか?

80年代、宋茂、猛兄弟、瀬古利彦、中山竹道、伊藤国光、喜多秀喜、児玉泰介、新宅雅也、谷口博美ら、日本選手は史上最強選手が揃った。やがて、これらの選手が現役を引退すると共に、日本男子マラソンは衰退の一途を辿った。かれらが指導者になり10数年が経過したが、未だに伊藤国光(カネボウ)以外、期待された後輩の指導に目立った結果が見れないのは周知の事実だ。かれらの時代より一世代若い世代の指導者が活躍している。ロンドンで坂口泰監督(中国電力)に、男子不振の背景を訊いた。

「箱根駅伝が正月番組の目玉商品、国民的な行事になって久しいのですが、その影響の良し悪しがでています。箱根駅伝は華々しいイメージがあり、ドラマティックに話題を取り上げる。選手は夏合宿、予選会から世間に注目されます。箱根駅伝を走ることは、日本中の大学生、高校生長距離選手の憧れです。そのこと事態は悪いことではありませんが、わずか4年間の短い期間に、目先の結果を追求することに没頭、打ち込んで総てを燃焼させてしまうケースが多い。卒業した途端、新たな目標が見つけられないで走り、情熱を見失う選手が多いと思います。世界一を決定するようなロンドンや五輪マラソンと比較すると、箱根駅伝はとても小さなレベルの低いローカル競技会に過ぎないのです。それが当事者、関係者などに、箱根を超えて世界を見据えるビジョンがなく、全く勘違いを起こす狭い環境の中で行われています。卒業と同時に、今度は世界を相手に戦って、結果を問われるのです。うちに入ってくる選手でも、学生時代の甘い感じを忘れられないで、全く次元の違う厳しい努力など考えられないのがいます。ぼくの大きな仕事は、かれらに自立したプロ意識を植え付けるための『洗脳』です。ぼくは瀬古さんの猛練習を見ています。瀬古さんはマラソンに総てを掛けていた。遊びながら楽しくやって、決して走れるわけがない。決定的な違いは、スピードでしょう。26分台の選手を作るのは難しいと思いますが、27分30秒の選手を育成。そして日本人は距離を走ることです。瀬古さんは70km走など取り入れていました。今の選手は、それだけの練習を消化できる身体も意識もできていない。現在のうちの選手でも、4,5分台はきついが、やれば6分台突入は可能です。これはあくまで仮定ですが、高岡のスピードで練習量が瀬古さんぐらい消化できれば、やはり相当な記録ができると思います。今回、尾方が初めて高地練習を本格的に行いましたが、まだまだ、不 安要素が多くて失敗しましたが、高地練習で能力を高めることもひとつの方法でしょう。」

 

(06年月刊陸上競技誌6月号掲載)

 
(望月次朗)

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