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第5回ワールド・アスレティック・ファイナル
室伏3位、池田4位

世界陸上ファイナルが、ドイツ・スチュットガルトで9月22,23日の両日に渡って開催された。初秋の暖かい天候に恵まれた。このファイナルは、今季各GL,GPなどで獲得した総合ポイント、ベスト8選手が優先的に出場権を獲得できるシステムだが、世界選手権直後だったため、棄権した選手もいた。日本選手は2名だけ。男子ハンマー投げで昨年同大会覇者の室伏広治(ミズノ)は77.95mで3位となった。一方、女子走り幅跳びに日本女子選手初めて参加できた池田久美子(スズキ)が2日目に6.48m跳んで3位と4cm差で4位。復活のきっかけをつかんだ。大会を通して、各種目で好結果を生んだ選手にスポットを当ててみた。

男子100mはアサファ・パウエル(ジャマイカ)大会3週間前、9秒74の世界新記録を樹立したばかり。絶好調振りを示して、あっさり9秒83の大会新記録で優勝。パウエルは「シーズン終盤でこの記録は非常に嬉しいものだ。」と結んだ。

男子200mで前日100mで2位になった、ジャスマ・サイディ・ンデュレ(23歳、ノルウェー)が、19秒89の同国新記録でスペルマンを抑えて優勝。今季5位の好記録でこれまでの自己記録は20秒25だった。一挙に、サブ20秒台に突入する驚異的な伸びしろを見せたから驚きだ。両親は西アフリカにある小国ガンビア出身。父親がノルウェーに27年間移民している関係から01年からオスロー在。ガンビア代表でアフリカ選手権出場経験もある変り種。100m10秒07、長身でスリムな、まだまだ荒削りの走りをする。かれは優勝の喜びをこう語った。「今季最後のレースで信じられないような記録が出た。世界で最も幸せな男だ。本格的な陸上競技練習を始めてまだ4年ぐらいだ。五輪ではメダルを獲得したいね。」

エドウィン・チェルイヨット・ソイ(ケニア)は、昨年同2種目とも2位に甘んじ、大きな大会で優勝経験が皆無の選手が大ブレーク。男子3000,5000m2冠を達成した。優勝の喜びを「大阪で走れなかった悔しさをここで晴らした。」と語った。




男子110mHはデイロン・ロブレス(キューバ)が、昨年同じトラックで劉翔が出した12秒93を破る世界歴代4位の12秒92で優勝。それまでの記録はやはり昨年、劉翔についで13秒00で2位になったときのもの。かれ自身も驚き、興奮してしばらくトラックに留まっていた。「信じられないような記録だ!大阪でプレッシャーに負けて、メダル獲得にも届かなかった悔しさがここで爆破したのさ。」(注:写真でキスするメダルは、キューバ人が好む幸運をもたらすと言われるもの)

男子走り高跳びでドナルド・トーマスが2.32mを跳んで優勝を決めてから足の故障で中止。

世界選手権がフロックではないことを証明した。

大阪世界選手権大阪大会で、80.46mで6位に甘んじた室伏。9月9日のリエティ・グランプリはティホンを1センチ差で抑える82メートル62で優勝。ファイナルは室伏1回目がベストの投てきで3位に終わった。試合を終えた室伏はサバサバした表情。「来年に向けての位置づけとしての出場。」アテネに続く五輪2連覇を強く意識して、この遠征に手応えを感じている。「博士論文を書いていたため、昨年の冬季練習から練習不足だったし、シーズンに入ったのも数ヶ月遅かったので試合数も少なかった。これらの影響があるので波があるのは当然。その中で来季に向けての足がかり、北京五輪に向けてそれなりの準備です。」

そのほか、男子で棒高跳び優勝者のブラッド・ウォーカー、走り幅跳びのアンドリュー・ホウェらが印象あるジャンプを見せた。

一方、女子400mはサンヤ・リチャーズ(米国)が今季世界最高に並ぶ49秒27で圧勝した。「48秒台を狙ったが・・・、この記録でも満足している。」

女子800m、ジャネス・ジェプコスゲイ(ケニア)が先行逃げ切り作戦で1分57秒87の大会新記録で優勝。引っ張られて7人までがサブ2分を記録した。「作戦が成功して優勝。シーズンオフにどこかにバカンスに行く予定。」

女子3000m、メセレット・ディファー(エチオピア)がスタートから独走で8分27秒24の大会新記録で優勝。「バカンスに好きなギリシャに行く予定。来季は五輪5000m2連勝を狙う。」

女子棒高跳びでは珍しく、イェレナ・イシンバエワ(ロシア)とモニカ・ピュレック(ポーランド)の2人が同記録のため、バーを大会新記録4.87mに上げての優勝決定戦。こうなると勝負強いイシンバエワが一発でクリアーして勝った。ピュレックも同国新記録だった。

この大会は3年間連続して同じ場所で開催される契約だったが、新サッカー専用競技場が建設されるため、1年を残してほかに大会を移す予定とか。ドイツ国内で陸上競技は過去の栄光どころか、陸上競技がマイナースポーツになる傾向は現実な大きな問題だ。大きな都市の競技場がサッカー専用に改装されている。

 
(07年月刊陸上競技誌11月号掲載)
(望月次朗)

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