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第31回室内欧州選手権大会 三日目
開催国フランスの大躍進

異端児テディ・タムゴの三段跳び世界新記録

大会最終日、テディー・タムゴが本職の三段跳びで世界新記録を連発。会場は一気に熱くなった。昨年、ドーハ世界室内選手権大会を17.90mの世界新記録で優勝。2月8日、フランス選手権で自己記録を1センチ破る17.91mの世界新記録で優勝。その後、冬季練習をスペインの南で行い、幅跳びで一時代を築いたキューバのイヴァン・ペドロソの指導を受けながら合宿して調整。久々の大台18mジャンプに期待がかかった。1回目の跳躍で2番手に跳んだマリアン・オプレア(ルーマニア、26歳)が、いきなり17.62mの好記録でリード。5番手に跳んだタムゴは17.46m。タムゴは、「昨日の走り幅跳びで惨敗。まさか地元で本職の種目で負けるわけにはゆかない」と、本職の三段跳びは文句なしの記録で優勝を狙った。ところが、「オプレアの17.62mはショックだった。2回目、3番手の前回優勝者のファブリシオ・ドナト(イタリア、34歳)が、17.70mを跳んでかなりのプレッシャーが掛った。屈辱的な3位のポジションだった」と、苦笑。前回優勝者のドナトが、2回目のジャンプでイタリア新記録を樹立。タムゴは場内の興奮を振り払うようにしてスタート。スムースな助走から、大柄なタムゴの身体がジャンプ。例によって華麗なジャンプには程遠いが、ダイナミックなステップ。強靭な身体能力の高さで前に伸びた。ジャンプではろくにディップできないまま、右足から先に突っ込んで着地。タムゴは手応えのある時、瞬間的にパッと砂場から飛び出して駆け回るのが癖だ。掲示板が「17.92m世界新記録!」と表示された瞬間、真っ先に駆けつけてペドロソと抱き合った。タムゴは、「調子は最高に良かった。狙っていた記録と優勝を達成できた。あそこまで行けば18mを狙うしかないね。3回目は17.65mだったが、4回目にも17.92mのタイ記録。まあ、今回は18mの大台に届かなかったが、次にまたチャンスはあるさ。世界新記録で優勝したのでまあまあさ。フィリップ・イドウ(イギリス)が欠場したのは、多分おれの地元でやって惨めな負け方をしたくないためさ。」と皮肉った悪童ぶり。

新旧欧州スプリンターの対決が注目された男子60mは、アテネ五輪100mの銀メダリスト、ナイジェリア生まれ、ポルトガル国籍のフランシス・オビクウェルが6秒56で圧勝。前回優勝のドゥワイト・チャンバーズ(イギリス)が2位。地元期待の新星、クリストフ・ルメートレはベテラン勢に完璧に屈して3位に甘んじた。オビクウェルは、「永い間故障続きでまだ完璧に治っていないが、予選、セミも気持ち良く走れた。密かに期待していたが、まさか優勝するなんて思いもしなかったこと。勝ってこんな嬉しいことはないさ。」と完全復活を約束した。一方、ルメートレは、「原因が全く分からない。自分の走りができず、最も高いところに立てなかった。大会に向けてフロリダで猛練習した成果を出せなかったことが最も悔やまれる」と、まさかの銅メダル獲得に終わった。

女子棒高跳びで、今季復活を果たしたイェレナ・イシンバエワ(ロシア)は欠場したが、アナ・ロゴウスカ(ポーランド)が、歴代3位の4.85mをクリアーして優勝。続く4.91mにバーを上げて攻めたが失敗。

ロシアが合計15個のメダルを獲得、フランスが予想以上に地元の利を生かして5個の金メダル、合計12個のメダルを獲得して大成功で終了。次回、2013年はスウェーデンのイエテボリ市で開催される。しかし、地元フランスの目玉選手は、それなりに参加して期待通りの結果を残したが、男女の中・長距離トップ選手が不参加のため低調な記録に終わっている。伝統ある欧州選手権は、アメリカ選手権のように賞金が出るわけではない。どのような方向性を見つけて行くか、多くの課題を残して大会を終了した。

 
(2011年月刊陸上競技4月号掲載)
(望月次朗)

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