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世界陸上男子やり投げ
デ・ゾルド、渾身の1投目がウィニングショット

ドイツは伝統的に世界でも稀にみる投てき強豪国と言ってよいだろう。そのドイツの男子円盤投げ、砲丸投げ、やり投げ3種目に優勝する大活躍が光った。

最初の優勝は円盤投げだった。2連覇を掛けた円盤投げでロバート・ハーティング(27歳)が、4投目に68.97mを投げ、2位のゲルト・カンテル(エストニア、31歳)に2mの大差をつけて圧勝。前大会で見せたように怪力でTシャツを千切って見せた。

ハーティングは、「今日は68mを投げることができるとは思っていなかった。2位に2m以上の大差をつけて勝てたのは、多くの円盤投げ選手が故障を抱えて万全の健康状態ではなかったからだろうと思う。おれ自信膝に爆弾を抱えて投げてきた。予選で痛み止めの注射を打ってきたが、しかし、決勝では痛み止めの注射が効かず、試合中にも痛かった。膝が痛く回転するときに注意深くターンしてスピードが鈍ったが、テクニックはうまくまとまって良かった。今夜、砲丸投げのラルフ・バルテーズにビールのシャワーを受けて治るかも!」と、笑い飛ばした。2連覇の快挙は、ドイツ投てき陣に幸先良い刺激をもたらした。

ハーティングの優勝から2日後、砲丸投げのデヴィッド・シュトール(21歳)は、自己記録を1m以上伸ばす21.78mの驚くべき記録で史上最年少優勝。砲丸投げは豊富な経験によって身に付くテクニック、スピードが絶対必要だ。決勝進出選手の年齢は、ざっと見ても30歳を超している。童顔の21歳の若者が、ベテラン選手を向こうに回して、本人自身が信じられない記録で圧勝した快挙だ。

男子円盤、砲丸投げで2個の金メダル獲得は、ドイツ投てき陣に適度な刺激を与えたことは言うまでもない。シュトールの劇的な優勝から2日後、男子やり投げでイタリア移民3代目のマティアス・デ・ゾルド(ドイツ、25歳)が、「1投目に勝負を掛けろ!」のコーチの指示に、渾身の力を込めて投げた。デ・ゾルドは、「思ったよりヤリが飛んでくれた。86.27mは悪くはないが、いつ誰かに抜かれはしないかと、最後まで優勝できるとは思っていなかった。世界選手権で優勝したからとオレが世界一のやり投げ選手とは思っていない。」ドイツがやり投げで優勝したのは、1983年第1回大会の旧東ドイツ以来の快挙だ。勝負に強い優勝候補筆頭のアンドレアス・トルキルドセン(ノルウェー、29歳)は、大会3週間前に90.61mを投げて調子が良かったはずだが、不本意な結果で首を傾げていた。

 
(2011年月刊陸上競技10月号掲載)
(望月次朗)

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