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世界ハーフマラソン選手権 バレンシア2018

カムウォロル 3連覇
15km〜20kmのスプリットを驚異の「13分01秒」にペースアップ


 23回目を数える世界ハーフマラソン選手権は3月24日、地中海沿岸にあるスペイン第3の都市・バレンシアで開催され、男子はジェフリー・カムウォロル(ケニア 25歳)が1時間0分02秒で悠々と3連覇を果たした。
女子はネトサネト・グデタ(エチオピア 27歳)が1時間6分11秒で初優勝し、世界記録(1時間4分51秒)には1分20秒及ばない世界歴代13位タイのタイムながら「女子単独レースの世界新記録」として5万ドル(約530万円)のボーナスを手にした。



 日本勢の男子は大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)の24位(1時間1分56秒)。女子は17位の森田香織(パナソニック)の17位(1時間10分46秒)が最高で、各国上位3人の合計タイムで競う団体戦で女子は4位だった。

 バレンシアの港に近い場所にオペラハウス、科学博物館など4つのホールを併設した前衛的な巨大建造物「パラウ・デ・レス・アルツ・レイナ・ソフィア」がひときわ目を引く。ここは「The City of Arts and Sciences」(芸術科学都市)のテーマで2005年に完成したものだが、バレンシア市は新たに「The City of Running」(ランニング都市)のテーマを掲げ、世界ハーフマラソン選手権を歓迎した。
 今大会の男子は70ヵ国から160名、女子は53ヵ国から122名が参加した。気温15度だが、冷たい強風が選手を苦しめた。最初に公園の中の橋の上から女子が午後5時05分にスタート。25分後に男子と一般参加ランナー1万5000人が同時に出発した。市内を巡り、再び公園に戻って科学博物館前の池に特設されたフィニッシュ地点を目指す。


女子
 エチオピア、ケニア、バーレーンの3ヵ国の選手が序盤からトップ集団を構成。12人が最初の5kmを15分39〜40秒で通過した。男女混合レースでの世界記録(1時間4分51秒)を保持するジョイシリン・ジェプコスゲイ(ケニア 24歳)、2年前の前回大会で4位だったネトサネト・グデタ(エチオピア)の2人を中心にしたレース展開だ。
 続く10kmはグデタ、ジェプコスゲイ、パウリン・カムル(ケニア)、ユニス・チュンバ(バーレーン)の4人は31分38秒で通過。その後、グデタがやや抜け出し、15km通過は47分30秒。4秒差でカムル、さらに4秒差でジェプコスゲイが追走したが、グデタは20kmまでのスプリットを一気に15分23秒に上げて後続を突き放し、終盤は独走。結局、2位以下に43秒の大差をつける1時間6分11秒でフィニッシュした。このタイムは世界歴代13位タイだが、女性だけのレースでの世界新。従来の記録は、2007年の第16回世界ハーフ(当時の大会名は世界ロードランニング選手権)でローナ・キプラガト(ケニア)が樹立した1時間6分25秒だった。
 グデタは「調子が良く、自己記録(1時間7秒26秒/ 17年)を更新してエチアピアの団体優勝に少しでも貢献できればと思っていましたが、まさか(女子単独レース)世界新記録で優勝するなんて! 私自身はもちろん、エチオピア陸連も驚いているでしょう」と声を弾ませ、「1月の世界ハーフ選考レースはドバイ・マラソンの直後で出場できなかったのですが、ドバイは途中棄権したので『それほど疲れていないだろう』と言われて合宿に呼ばれたんです。若手ばかりでのチームで、『国際経験のあるベテランも入れておけば何らかの貢献をしてくれるのでは』という程度しか期待されずに選考されていました」と笑顔を見せた。
 グデタはエチオピア若手の登竜門であるグレート・エチオピアン・ラン(10km)で2013年に優勝し、翌年は2位。2015年の世界クロカンで3位になったが遅咲きのランナー。ティルネシュ・ディババら多くのエチオピア・エリートランナーを指導するハジ・アディロ・ロバの門下でトレーニングを積んでいる。


 日本勢は森田香織(パナソニック)が1時間10分46秒で17位、一山麻緒(ワコール) が19位と奮起。団体戦はエチオピアが圧勝し、日本は、ケニア、バーレーンに次ぐ4位だった。


男子
 この時期、大物マラソン選手は春先のメジャーマラソンに集中。世界ハーフどころではない。ただし、ジョフリー・カムウォロル(ケニア)は、今大会3連覇を狙った。強風の悪条件下、最初の5kmは14分31秒で入り、次の5kmはさらにスピードが落ちて14分57秒と遅い展開だ。次の5kmも14分45秒だが、満を期したカムウォロルが15kmから20kmのスプリットを一気に13分01秒へ上げて他を圧倒。2位に20秒の大差をつける3連覇を果たし、格の違いを見せた。
「春の目標はこの大会の3連覇で、目標を達成できて大変うれしい」と満足げに話したカムウォロルは、「夏はトラックを走り、秋にはニューヨークシティ・マラソンを走る」と今後のプランを明かした。



 日本男子は東京五輪マラソン代表選考レースの「マラソン・グランド・チャンピオンシップ」への出場資格を得た選手を中心に、世界を経験させるかたちで派遣されたが、アフリカ勢が一気に走り抜ける「ハーフ」ではまったく太刀打ちできず、1時間1分56秒で24位だった大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)以外の日本勢は一般参加の欧米トップジョガーの後塵も浴び、団体戦は12位に甘んじた。

 

 
(月刊陸上競技2018年5月号掲載)
●Text & Photos / Jiro Mochizuki(Agence SHOT)

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